2009 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的遺伝子発現解析による難治性動的アロディニアの新規治療標的分子の探索と同定
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21791442
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐々木 淳 University of Toyama, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 助教 (10401811)
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Keywords | アロディニア / 帯状疱疹後神経痛 / 帯状疱疹 / マイクロアレイ / ウイルス / 脊髄後角 |
Research Abstract |
衣服が擦れるといった動的な機械刺激により痛みが生じる動的アロディニアは神経障害性疼痛の代表的症状であるが,有効な治療薬はない。本研究は,申請者らが独自に作出した帯状疱疹による動的アロディニアのマウスモデルを用いた網羅的遺伝子発現解析により,難治性動的アロディニアの新規治療標的分子を同定することを目的として実施した。麻酔下in vivo細胞外電位記録法を用いた実験から,患部皮膚節を支配する頸骨神経ではなく,腰髄脊髄後角深部広作動域ニューロンの興奮性の増大が動的アロディニアの発生に関与することが示唆された。脊髄後角での主な抑制性神経伝達物質はグリシンである。シナプス間隙の抑制性グリシン濃度を増加させる目的でグリシントランスポーター2阻害薬を脊髄くも膜下腔内に投与すると動的アロディニアが顕著に抑制されたことからも,脊髄後角レベルの興奮性伝達の亢進が重要であるとの考えが支持された。そこで,帯状疱疹後神経痛マウスの患側脊髄で発現変化する遺伝子をAffimetrix社のGeneChipを用いて網羅的に解析し,動的アロディニア関連遺伝子を探索した。健常群と比較し帯状疱疹後神経痛群では2,030個のプローブセットに発現変化がみられた。発現増加した遺伝子のうちATP受容体サブタイプであるP2X7受容体に注目し,さらに検討を進めた。定量的RT-PCRにより患側脊髄におけるP2X7受容体mRNA発現増加を確認した。選択的P2X7受容体拮抗薬の脊髄くも膜下腔内投与は,単回投与により急性の抗アロディニア効果,反復投与により持続性の抗アロディニア効果を示した。P2X7受容体免疫活性は脊髄後角ニューロンとアストロサイトでは観察されたが,ミクログリアでは観察されなかった。本年度の研究から,難治性動的アロディニアの治療標的分子として,脊髄後角ニューロンとアストロサイトに発現するP2X7受容体を新規に同定した。
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