2010 Fiscal Year Annual Research Report
アディポサイトカインの担う難治性疼痛形成におけるエピジェネティクス制御機構の解明
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21791469
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
木口 倫一 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90433341)
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Keywords | レプチン / マクロファージ / 好中球 / CXCL2 / エピジェネティクス / ヒストン / 神経障害性疼痛 |
Research Abstract |
<研究の目的> これまでにアディポサイトカインであるレプチンがサイトカイン・ケモカインの発現増加を伴う神経炎症を増悪させ、難治性疼痛を形成することを示してきた。本研究の目的はレプチン依存的な難治性疼痛形成を担うエピジェネティクス制御機構を明らかにすることである。 <実験方法> 坐骨神経部分結紮(PSL)モデルマウスおよび培養細胞株を用い、行動薬理学的、生化学的および免疫組織・細胞化学的手法による解析を行った。 <実験結果> 培養マクロファージにおいて、レプチン処置によりケモカインCXCL2の発現増加が観察された。PSL後の坐骨神経においてもCXCL2およびその受容体であるCXCR2の発現増加が認められ、それらは傷害神経に集積するマクロファージおよび好中球に発現していた。CXCL2-CXCR2経路を薬理学的に阻害すると、PSLにより惹起される触アロディニアおよび熱痛覚過敏が抑制された。リコンビナントCXCL2を局所投与すると触アロディニアおよび熱痛寛過敏が誘発された。またCXCL2は好中球の動員を促進するとともに、種々の炎症性サイトカイン、ケモカインの発現増加を誘導することを見出した。クロマチン免疫沈降による解析の結果、CXCL2およびCXCR2のプロモーター領域におけるヒストンH3のアセチル化が亢進しておりそれは遺伝子発現増加のタイムコースと一致していた。ヒストンアセチル化酵素の阻害薬を処置すると、これらの発現増加ならびに神経障害性疼痛の形成がいずれも抑制された。 <考察・意義> 難治性疼痛形成の責任分子であるレプチン依存的なメディエーターとしてCXCL2を新たに同定した。 CXCL2はヒストン修飾に基づくエピジェネティクス制御機構を介して発現増加し、神経障害性疼痛の病態に大きく関与することが明らかとなった。
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