2011 Fiscal Year Annual Research Report
アディポサイトカインの担う難治性疼痛形成におけるエピジェネティクス制御機構の解明
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21791469
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
木口 倫一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90433341)
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Keywords | レプチン / マクロファージ / サイトカイン / ケモカイン / MIP / ヒストン / エピジェネティクス / 神経障害性疼痛 |
Research Abstract |
<研究の目的>申請者らは難治性疼痛の分子基盤におけるアディポカインの役割に焦点を当て、アディポカイン依存的な難治性疼痛形成におけるエピジェネティクス制御機構の解明に着手した。 <実験方法>坐骨神経部分結紮(PSL)モデルマウスおよび培養細胞株を用い、行動薬理学的、生化学的ならびに組織化学的手法により各種解析を行った。 <実験結果>レプチンを培養マクロファージまたはシュワン細胞に処置すると、ケモカインであるマクロファージ炎症性タンパク質(MIP;MIP-1α,MIP-1β,MIP-2)の発現が増加した。傷害坐骨神経においてもMIPsはいずれも発現が増加し、活性化シュワン細胞もしくは傷害部位に遊走するマクロファージや好中球などに局在が認められた。またこれらのリガンドに対応する受容体(CCR1,CCR5,CXCR2)も同様に傷害坐骨神経において発現が増加していた。各種薬物によりこれらのケモカインシグナルを局所的に阻害すると、PSLによる神経障害性疼痛(触アロディニアおよび熱痛覚過敏)が抑制され、傷害坐骨神経における炎症性メディエーター(IL-1β,TNFαなど)の発現も減弱していた。クロマチン免疫沈降の結果、傷害坐骨神経でのMIPsのプロモーター領域におけるピストンH3のアセチル化亢進が認められた。ヒストンアセチル化酵素の阻害薬であるアナカルジン酸を全身投与すると、傷害坐骨神経におけるMIPsの発現増加ならびに神経障害性疼痛形成が抑制された。 <考察・意義>難治性疼痛の責任分子であるレプチン依存的な炎症性メディエーターとしてMIPsに着目し、末梢神経炎症に基づく神経障害性疼痛との関連を明らかにした。さらにその発現変動はヒストンアセチル化に依存しており、薬理学アプローチに基づくピストン修飾調節が難治性疼痛の改善に繋がる可能性を示すことができた。
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