2009 Fiscal Year Annual Research Report
ラット脊髄損傷モデルに対する嗅粘膜移植治療の有効性~膀胱機能の評価による検討
Project/Area Number |
21791500
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高尾 徹也 Osaka University, 医学系研究科, 助教 (30379177)
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Keywords | 脊髄損傷 / 排尿 / 嗅粘膜移植 |
Research Abstract |
近年ラット脊髄損傷モデルに対し嗅粘膜移植の研究が行われている。嗅球から鼻腔内の嗅粘膜に至る嗅神経系は、生涯を通して神経再生がみられる特異な部位で、嗅粘膜は神経幹細胞である基底細胞や、NGF、BDNFなどの神経栄養因子を分泌する嗅神経鞘細胞を含んでおり、神経軸索の伸展を促していると考えられている。脊髄損傷に対する自家嗅粘膜移植治療の臨床応用が開始され、下肢運動機能の改善効果が見られている。今回我々は、脊髄損傷モデルラットにおいて膀胱機能の評価を行い、嗅粘膜細胞移植によって膀胱機能にどのような変化がもたらされるかを検討した。 雌性SDラットに対して第9胸椎レベルの脊髄を完全離断し、2mmの間隙を作成。損傷直後にこの間隙に、同系統ラットから採取した嗅粘膜を0.5mm大に細片化し移植した。脊髄損傷コントロールモデルとして、損傷脊髄間隙にゼラチン製剤を充填した。嗅粘膜移植(あるいはゼラチン充填)術後、4日目のCMGでは両群とも溢流性の排尿とそれに伴う膀胱内圧のわずかな上昇、下降がみられたのみで、明らかな排尿反射を思わせる波形は見られなかった。術後2週目には両群ともに排尿反射を示唆する波形、すなわち排尿と同期する膀胱内圧の急峻な上昇と下降が見られ、術後4週目にはそれぞれ排尿間隔の延長、1回排尿量の増加がみられた。また、嗅粘膜移植群では排尿収縮開始から終了までに要する時間の短縮も見られた。脊髄損傷コントロール群においては、排尿筋-外尿道括約筋協調不全(DSD)を示唆するEUS-EMGの過剰なburstingがみられたが、嗅粘膜移植群ではこれが抑制されていた。高位脊髄損傷後にはC線維求心性神経を介した排尿反射路が形成され、排尿筋過活動や排尿筋-括約筋協調不全(DSD)が出現すると考えられている。今回の結果より、嗅粘膜移植群は対照群と比較してDSDが抑制され、排尿効率が改善していることが示唆された。
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Research Products
(1 results)