2009 Fiscal Year Annual Research Report
腎癌増殖・骨転移におけるβ2ミクログロブリン刺激伝導系の影響に関する研究
Project/Area Number |
21791512
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
野村 威雄 Oita University, 大分大学・医学部, 講師 (40347034)
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Keywords | β2ミクログロブリン |
Research Abstract |
β2Mシグナル伝達系が活性化された高浸潤能腎癌細胞:β2M安定高発現腎癌細胞株(SN12C/β2M)は、形態的に上皮細胞の形態を喪失し、紡錘形の間葉細胞様を呈していた。免疫ブロット法で解析したところ、SN12C/β2M細胞ではEMT関連分子のうち、E-cadherin発現が減少し、N-cadherinおよびVimentin発現が増加していた。EMT関連分子の転写因子として唯一確立しているSnailの細胞内局在の変化および発現量の変化をSN12C/N細胞(コントロール細胞)とSN12C/β2M細胞とで比較したところ、SN12C/β2M細胞ではSnailは細胞質から核内に移動しており、その発現量はSN12C/N細胞では細胞質が優位に高発現し、SN12C/β2M細胞では核に高発現していた。Stat3の癌細胞におけるEMTへの関与に関しては詳細な研究はないが、本研究ではStat3-LIV1-Snailシグナル伝達系が腎癌細胞におけるEMTに関係し、さらにはβ2Mがこのシグナル伝達系の上流に位置して、腎癌細胞でのEMTを制御していることを解析した。抗β2M中和抗体を用いてβ2M-Stat3-LIV1-Snailシグナル伝達系を阻害すると、Stat3のリン酸化が抑制され、LIV1発現が低下し、Snailの核内への移動が抑制された。同時に細胞質におけるSnailの発現低下を認めた。また抗β2M中和抗体を作用させることで、mRNAおよび蛋白レベルでE-cadherin発現は増加し、N-cadherinおよびVimentinは発現低下していた。以上の結果から、β2M-Stat3-LIV1-Snailシグナル伝達系が腎癌細胞においてEMTを制御し、さらには浸潤能獲得にEMT関連分子の変化が関連する可能性があることが示唆された。
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