2010 Fiscal Year Annual Research Report
過活動膀胱の発症に関わるKIT-SCF遺伝子の一塩基遺伝子多型解析
Project/Area Number |
21791516
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
窪田 泰江 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (00381830)
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Keywords | 過活動膀胱 / Kit / 間質細胞 |
Research Abstract |
私たちはこれまで特に消化管の自発興奮の発生・伝達および神経筋伝達を制御しているカハールの介在細胞(Interstitial cells of Cajal : ICC)の存在に着目し、膀胱においてもICC様細胞がc-kit遺伝子によりコードされるレセプター型チロシンキナーゼであるKitを発現し、細胞間情報伝達の経路や神経筋伝達の介在細胞として働いている可能性を報告してきた。今回の研究では、モルモットを用いてBOOモデルを作成し、過活動膀胱の発症機序について検討した。KitおよびKitを活性化するリガンドであるSCFの局在と量的変化につき検討したところ、Kit陽性ICC様細胞は、BOOモデルの膀胱粘膜下層および漿膜側を中心に、正常膀胱に比べ増加していた。またSCFは尿路上皮を中心に発現が増加していた。また正常膀胱とBOO膀胱におけるICC様細胞の形態学的変化、神経や筋細胞との位置関係の違いを調べた。紡錘形をしたICC様細胞の細胞質にはミトコンドリアや粗面小胞体が豊富に存在し、細胞同士が互いに連絡しあい、神経・平滑筋とも密接している像を観察した。BOO膀胱においてはICC様細胞が一部変形しており、これらの微細構造の変化が過活動膀胱の発症につながっているものと推察された。メシル酸イマチニブ(グリベック[○!R])は、Kitを抑制することによりICC由来の消化管間葉系腫瘍に対しても効果が確認されている。私たちはこの点に注目し、BOOモデル動物にグリベックを投与したところ、排尿圧を変化させることなく、non-voiding contractionを抑制し、排尿間隔を延長させることが判った。この結果からKitがICC様細胞を介して過活動膀胱の発症機序に関与している可能性が示唆された。WSRC+/+群ではCYPの化学的刺激により排尿間隔が短縮しnon voiding contractionが増加する傾向が認められたが,KIT変異群では顕著でないことからC-fiberを介した求心性刺激伝達にKIT陽性間質細胞の関与が示唆された.c-kit遺伝子変異による間質細胞の形態学的変化は認められず,c-kit遺伝子変異はKIT陽性間質細胞の機能的消失をもたらすと考えられた。
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