2010 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌腹膜播種に関与するマイクロRNAの検査とその機能の解析
Project/Area Number |
21791555
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤田 健二郎 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (00452392)
|
Keywords | マイクロRNA / 腹膜播種 / 卵巣癌 / インテグリン |
Research Abstract |
我々は先行研究で、(1)腹膜播種環境はファイブロネクチンが豊富であること、(2)代表的なファイブロネクチン受容体であるインテグリンα5が、卵巣癌腹膜播種の初期段階である接着に重要な役割を果たしていることを報告している。そこで、本研究ではこのインテグリンの転写発現を制御するマイクロRNAを検討した。マイクロRNA検索ソフトウェアDiana-T等を用いて、候補マイクロRNAを検索し、過去の文献を照らし合わせて、hsa-mir-92aを抽出した。 まず、卵巣癌細胞株におけるhsa-mir-92aの発現と、インテグリンα5の蛋白レベルの相関関係を検討した。インテグリンα5の発現は6種中5種の細胞株(CaOV3,SKOV3-ip1,A2780,0VISE,RMG-1)で強発現していた。一方、Real-time PCR法で、hsa-mir-92aの発現を検討したところ、インテグリンα5の蛋白レベルでの発現がない卵巣癌細胞株RMUG-Sにおける発現を1とした際に、他の卵巣癌細胞株における発現は0.002~0.079と著明に抑制されていた。即ち、卵巣癌において、インテグリンα5の発現がhsa-mir-92aによって制御されている可能性が示唆された。 続いて、インテグリンα5が強発現している細胞株にhsa-mir-92aの前駆体を強制導入し、その発現を検討したところ、すべての細胞株において、インテグリンα5の発現が蛋白レベル(Western Blotting)およびmRNAレベル(Real TimeRT-PCR)で有意に抑制された。さらにインテグリンα5の3'非翻訳領域をルシフェラーゼ遺伝子の上流に導入したベクターを作成し、それを強制導入して.ルシフェラーゼアッセイを行った。hsa-mir-92a導入細胞において、転写活性が抑制された。即ち、hsa-mir-92aはインテグリンα5の3'非翻訳領域に結合することにより、直接的にインテグリンα5の発現を制御することが判明した。 最後にhsa-mir-92aの強制導入により、卵巣癌細胞の浸潤能、接着能に与える影響を検討した。hsa-mir-92aを卵巣癌細胞に強制導入したところ、In Vitroの検討では、ファイブロネクチンへの接着能が有意に低下し、それに伴い、癌細胞の浸潤能(Matrigel Invasion Assay)も低下した。 以上、マイクロRNA,hsa-mir-92aが卵巣癌細胞株において、インテグリンα5の転写発現を直接制御することにより、癌細胞の接着能、浸潤能を抑制することが判明した。即ち、hsa-mir-92aを標的とした治療が卵巣癌腹膜播種抑制に有効である可能性が示唆された。
|