2010 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌3期におけるFISH法を用いた遺伝子コピー数の変化による新分類の試み
Project/Area Number |
21791558
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
石川 雅子 島根大学, 医学部, 助教 (50467718)
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Keywords | 癌 / ゲノム |
Research Abstract |
卵巣癌は早期診断が困難で、約60%は腹膜播種を伴った臨床進行期3期で発見されるが、同じ3期でも極めて予後不良な症例と長期生存している症例を、日常臨床においてしばしば経験する。卵巣癌において、これまでDigital Karyotypingで最も遺伝子増幅の頻度が高い遺伝子群と報告されたCycline E1、RSF-1、Notch3、AKT2、PIK3CAの遺伝子コピー数の変化を、卵巣癌症例が多数プロットされたTissue Microarray(以下TMA)を用いてFISH法で検討し、さらにそれぞれの遺伝子増幅と、既存の臨床病理学的因子、患者予後との関連について検討することにより、3期卵巣癌症例の予後を規定しうる遺伝子増幅の頻度による新分類(Genetic classiflcation)を試みた。 これまでのところ、Cyclin E1(CCNE1)の増幅が、予後不良因子となることが示唆された。CCNE1の遺伝子増幅は20.4%(18例/88例)に認められた。CCNE1の免疫染色はHSCOREで評価し中央値は70(0~353)で、CCNE1の遺伝子コピー数と免疫染色のHSCOREは有意に正の相関を示した(r=0.522,P<0.0001)。CCNE1遺伝子増幅と卵巣癌患者の予後についてカプランマイヤー法で検討したところ、CCNE1の遺伝子増幅症例は無病生存期間、全生存期間ともに有意に短かった。免疫染色のHSCOREは中央値で2群に分けたところ、無病生存期間、全生存期間ともに有意差はなかった。CCNE1の遺伝子増幅は卵巣癌患者の予後に重大な影響を与えている事が明らかとなった。また卵巣癌細胞株を用いたCCNE1の機能解析ではCCNE1siRNAによる遺伝子サイレンシングにより細胞増殖抑制効果が顕著であり、細胞増殖抑制効果はAnexin Vを用いたアホトーシス、BRdUを用いた細胞増殖実験の両方に有意であった。さらに、この効果は細胞周期解析によりのG1期の細胞周期停止に依存する事が明らかとなった。CCNE1の遺伝子サイレンシングの結果を確認するために、逆にCCNE1未発現の細胞株ES2、TOV-21GにCCNE1を遺伝子導入したところ、CCNE1安定発現細胞株はES2、TOV-21Gいずれもコントロールベクター導入株に比べて細胞増殖能が亢進していた。これらin vitroの結果もあわせ、CCNE1遺伝子増幅を示している症例に対してはCCNE1は有効な分子標的因子となる可能性が示された。
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