2011 Fiscal Year Annual Research Report
胚性幹細胞の未分化性を規定する膜タンパク質の機能的ダイナミクスに関する研究
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21791580
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
三浦 巧 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 研究員 (60405355)
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Keywords | CD9 / ES細胞 / 未分化 / 分化 / テラトーマ / キメラマウス |
Research Abstract |
現在までの本課題における研究では、未分化ES細胞に特異的に発現している膜タンパク質分子CD9は、マウスES細胞の未分化維持において機能的に必須でないことを示してきた。加えて、CD9分子はES細胞の分化能にも関与していないことが、in vitro分化誘導実験に基づいて明らかとなった。そこで本年度では、分化多能性の評価を、in vivo解析系により実施した。免疫不全マウスの皮下にCD9-/-ES細胞を移植し、一ヶ月後に腫瘤を摘出し、テラトーマ形成能を評価した結果、三胚葉系列の各組織へCD9-/-ES細胞が分化したことが観察された。次に、CD9-/-ES細胞が多能性を保持しているかを証明するために、CD9-/-ES細胞に由来するキメラマウスの作製を行った。まず、正常マウスの胚盤胞に緑色蛍光たんぱく質EGFPで標識したCD9-/-ES細胞を注入し、仮親の子宮へ移植した後、新生児を解析した。その結果、一様にEGFP陽性細胞の分布がマウス新生児において認められ、CD9-/-ES細胞は十分に分化多能性を保持していることが判明した。以上の結果より、CD9はES細胞の分化系譜を規定する分子ではないことが示唆された。また、CD9-/-ES細胞と野生型ES細胞における遺伝子発現レベルの違いを網羅的に解析した結果、CD9遺伝子の欠損がES細胞における遺伝子発現動態に顕著な変化をもたらさないことが示された。即ち、CD9-/-ES細胞においては、CD9の働きを他の分子が補填することで、未分化性および分化多能性の性質が維持されているものと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、「CD9欠損ES細胞における分化多能性評価をin vivo解析系により実施する」ことを主な研究計画として掲げ、本計画をすべて遂行することができ、CD9分子のES細胞の分化に関わる役割を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、ES細胞の未分化・分化という現象に関し、CD9分子がどのような役割を果たしているかを明らかにすることができた。以上の研究成果をさらに発展させる目的で、今後はCD9分子から派生する未分化維持メカニズムを詳細に解明したいと考えている。さらに、CD9分子の類縁膜タンパク質群についても、ES細胞未分化維持との関連性について検証を行う予定である。
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