2010 Fiscal Year Annual Research Report
高齢動物モデルを用いた、脱神経と異所性神経再支配に関する基礎的研究
Project/Area Number |
21791624
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宮丸 悟 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (10535636)
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Keywords | 加齢 / 脱神経 / 反回神経麻痺 / 神経再支配 / 神経筋弁移植術 |
Research Abstract |
生後20ヶ月齢の高齢モデルラットおよび生後8週齢の若年モデルラットを用いて実験を行った。それぞれ、反回神経を切断した脱神経群と、反回神経切断後に神経筋弁移植術を行った移植群の2群を作製した。神経筋弁移植術では、頸神経とそれが支配する胸骨舌骨筋を用いて神経筋弁を作製し、脱神経した甲状披裂筋に移植した。平成21年度には、脱神経群、移植群ともに処置の10週後に組織学的検討を行ったが、今年度は誘発筋電図検査を用いた生理学的検討を行った。また、処置の20週後に評価する群を新たに作製し、同様に検討を行った。誘発筋電図検査では、移植した頸神経を刺激した際の甲状披裂筋の活動電位を記録した。 ・誘発筋電図検査では、移植群のすべてのモデルで、頸神経を刺激した際に甲状披裂筋の活動電位が認められた。これは、頸神経を切断した後には認められなかった。このことから、甲状披裂筋は移植した頸神経からの異所性神経再支配を受けていることが示唆された。組織学的検討では、筋の断面積が脱神経群よりも有意に大きく、神経再支配によって脱神経に伴う筋の萎縮性変化が抑制されたことが確認された。以上の結果は若年モデルと同様であり、また、若年モデルの移植群と比較しても遜色のない結果であった。 本研究の結果は、臨床において、高齢者であっても神経筋弁移植術で若年者と同様に筋の萎縮が防止でき、音声の改善が期待できることを支持する結果であった。高齢化が進む近年、反回神経麻痺による嗄声に対しても高齢者を対象に治療を行う機会が増加してきている。このため、加齢モデルでも同様の効果が得られることを確認できた本研究の臨床における意義は大変大きいと考えられる。
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