Research Abstract |
鼻咽喉腔は,外来病原体に対する生体防御の最前線に位置し,その粘膜は,自然免疫,獲得免疫において重要な役割を担っている.ヒト鼻粘膜上皮は,発達したタイト結合による上皮バリア機能を有し,抗原取り込み機構については,鼻咽腔リンパ装置(NALT)同様,抗原提示細胞である樹状細胞およびM細胞の関与が考えられている.我々は,以前アレルギー性鼻炎において,抗原提示細胞であるCD11c陽性樹状細胞が上皮と同様のタイト結合分子を発現し内腔に樹状突起を伸ばしていることを報告した.しかし,鼻粘膜上皮の抗原取り込み能を有するM細胞については,未だ不明である.消化管においては,樹状細胞が上皮と同様のタイト結合分子を発現し内腔に樹状突起を伸ばしバリアを維持したまま抗原を取り込むことが世界で初めて報告され,さらに最近,消化管粘膜関連リンパ装置(GALT)同様に,腸絨毛上皮中にも,M細胞が散見されることが明らかとなった.このことからも,鼻咽腔リンパ装置(咽頭扁桃)だけでなく,鼻粘膜上皮中にもM細胞が存在する可能性が十分考えられる.本研究では,咽頭扁桃のM細胞を指標にして,鼻粘膜組織および培養鼻粘膜上皮細胞を用いて,鼻粘膜上皮のM細胞の同定,分離および分化誘導を行い,鼻粘膜上皮のM細胞の特異的タイト結合蛋白の発現を検索し,最終的にはヒト鼻粘膜上皮における抗原提示機構(M細胞,樹状細胞)と上皮のバリア機能との関係を明らかにする.これらの研究成果は,ヒト鼻粘膜のタイト結合による上皮バリアを維持したままM細胞に特異的に抗原を取り込ませるdrug delivery systemにつながると考えられる.さらにM細胞をターゲットとしたDNAワクチン療法にもつながると考えられる.
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