2009 Fiscal Year Annual Research Report
難治性中耳炎におけるインフルエンザ菌のバイオフィルム形成に関する研究
Project/Area Number |
21791637
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
竹井 慎 Wakayama Medical University, 医学部, 助教 (40347589)
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Keywords | バイオフイルム / インフルエンザ菌 / 中耳炎 |
Research Abstract |
小児急性中耳炎は幼小児期の代表的な感染症である。起炎菌としては肺炎球菌、無莢膜型インフルエンザ菌Nontypeable Haemophilus influenzae (NTHi)、モラクセラカタラーリスが主な菌であるが、とくにNTHiは遷延性、反復性の中耳炎と関係が深い。現在までNTHiによる中耳炎など感染症の難治化には、薬剤感受性の低下、小児免疫機能の未熟が指摘されていたが、近年NTHiはバイオフィルムを形成することが報告されている。 自然界で細菌は浮遊菌の状態よりもバイオフィルム内で存在するほうがより普遍的であり、中耳、アデノイド、扁桃など耳鼻咽喉科領域の感染症からバイオフィルムの存在が証明されている。バイオフィルムは微生物が悪環境から自らを守るための防御機構であり、一般的にバイオフィルム感染症は抗菌薬治療に対して強い抵抗性を持つ。 細菌の抗菌薬感受性試験として、従来の最小発育阻止濃度MICは浮遊菌に対する効果を的確に評価できるが、バイオフィルム状態の細菌に対する効果を評価することはできない。バイオフィルム状態の細菌の抗菌薬に対する感受性を評価できる新しい方法として最小バイオフィルム抑制濃度minimal biofilm eradication concentration (MBEC)を検討した。これはin vitroでバイオフィルムを形成した細菌に対して抗菌薬を段階希釈して投与し、感受性を表したものである。抗菌薬の種類によって、MICとMBECの関係は様々な様相を示し、バイオフィルムに対する抗菌薬の効果は浮遊菌に対する抗菌薬の効果と全く異なるものであることが分かった。 遷延性・反復性の中耳炎ではバイオフィルムが関与していることが示されており、MICだけではなく、バイオフィルムに対する抗菌薬感受性を示すMBECを考慮することが、治療において重要になると思われる。
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