2010 Fiscal Year Annual Research Report
頭頸部癌特異的なマイクロRNAの解析と治療標的としての可能性
Project/Area Number |
21791644
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
稲垣 康治 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (70348738)
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Keywords | 癌 / 遺伝子 |
Research Abstract |
頭頸部癌の発症・予後の予測に有用なバイオマーカーは現在のところ存在しない。研究代表者の所属する研究室ではマイクロRNA(miRNA)に着目し、頭頸部癌、特に喉頭癌の臨床検体を解析して、特有のmiRNAs発現傾向(6種類のmiRNA発現上昇と3種類のmiRNA発現低下)をつきとめた。この成果を踏まえて、miRNAを用いたバイオマーカーの開発、更には新しい癌治療の可能性が広がると考え、miRNAと癌の悪性度や発症・進展との関連、更には関連するmiRNAの作用抑制または作用促進による腫瘍抑制効果について研究を行った。 まず、臨床検体を用いたmiRNA定量的発現解析を行った。喉頭疾患患者の臨床検体の中から、良性組織、喉頭前癌病変(軽度・中等度・高度異型性組織)、喉頭癌組織(早期癌から進行癌まで)を50検体および5種類の扁平上皮癌細胞株について、喉頭癌組織において発現が増加または減少していたマイクロRNAの定量的発現解析を行った。結果、腫瘍の悪性度に関連してmiR-196aは増加傾向を、miR-133bおよびmiR-375は減少傾向を示すことをつきとめた。 続いて、いくつかの扁平上皮癌細胞株にmiR-196a inhibitorまたはmiR-133b,miR-375 mimicを遺伝子導入し、特に喉頭癌細胞株JHU-011において、miR-196a inhibitor遺伝子導入による増殖抑制効果が顕著であることをつきとめ、さらにin vivo腫瘍モデルにおいてもmiR-196a inhibitorは腫瘍抑制効果を示し、治療的意義を持つ可能性があることを示した。 今年度は同様の手法を用いて、下咽頭癌細胞株FaDuにおいてmiR106b* inhibitor遺伝子導入による細胞増殖抑制効果を確認したが、in vivo腫瘍モデルにおいては一定の効果は得られなかった。
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