Research Abstract |
我々は、実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)マウス眼球組織におけるmiRNAの発現定量解析を行った。同時に商業ベースで購入可能なヒト脳・心臓・血液由来の組織サンプルと比較解析した。miRNAは、文献的考察からヒトおよびマウスで塩基配列が共通しているlet-7a, miR-9, miR-16, miR-128a, miR-137, miR-323-5pを選択した。let-7aを内在性コントロールとしヒト心臓との発現比を算出した結果、EAUマウスの眼球でmiR-9(86.5倍)とmiR-323-5p(23.5倍)が高発現していた。ヒト血液では全く発現を認めず、ヒト脳組織では400倍以上の高い発現を認めた。この結果から、miRNAの発現パターンに種差、また臓器により発現量・発現様式が異なることを明らかにした。次に、ヒトの眼球組織におけるmiRNAの発現様式を解析した。miRNAはlet-7a, b, d, e, g, i, miR-9, 9^*, 10a, 15a, 15b, 16, 17-3p, 17-5p, 19a, 20, 21, 23a, 23b, 25, 26a, 26b, 27a, 27bを解析に用いた。let-7aをコントロールとして、16種類のmiRNAが2倍以上の発現上昇を認めた。特に5倍以上の発現上昇を認めたのはmiR-9(6.6倍),let-7b(14.8倍),let-7d(8.8倍),miR-15b(7.6倍),miR-17-3p(16.7倍)であった。データベース検索によりlet-7bやlet-7dはIGFBP(insulin-like growth factor mRNA binding protein)1, 2, 3やIGF1R(insulin-like growth fctor 1 receptor)などインスリンの代謝に関わる遺伝子を標的としたmiRNAであることが明らかとなった。次に384種類のmiRNAを網羅的に解析できるLow density Arrayを用いてヒト眼球組織における発現解析を行った。RNU6Bを内在性コントロールとして129種類は発現を認めず、発現低下したmiRNAが104種類、上昇したmiRNAが134種類であった。発現上昇を認めた上位5つはmiR-520h, miR-26a, miR-182, miR-204, miR-9,発現低下を認めた上位5つはmiR-217, miR-367, miR-337-3p, miR-369-3p, miR-496であった。これらmiRNAが共通して制御する可能性のある遺伝子はIGF1R, IGF2R, IGF2BPなどインスリン代謝に関わる遺伝子であった。眼球組織は、網膜・脈絡膜など血流が豊富でエネルギー代謝が活発な臓器であり、インスリンなど糖代謝に関与する遺伝子の発現制御がmiRNAレベルで行われる可能性が示唆された。生理的状態での発現プロファイル情報を得ることができたので来年度以降は、疾患モデル(EAU)における発現解析により、病態発現に関与するmiRNAの同定を行う予定である。
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