Research Abstract |
角膜潰瘍は,角膜実質を構成するコラーゲンの過剰分解がその本態であると考えられる.これまでの組織学的検討から角膜潰瘍周辺に角膜実質細胞,活性化した角膜線維芽細胞,浸潤してきた好中球などの炎症細胞が認められることが明らかとなっている。中でもコラーゲン分解の中心的役割を角膜線維芽細胞がはたいしていると考えられる。感染性角膜潰瘍は臨床上見かける頻度が高く,抗菌薬のみで感染初期なら治癒することが多い。しかしながら,ある程度進行した角膜潰瘍ではすぐには治癒にいたらず,さらに進行することがしばしば臨床の場でみかける.病原微生物の死滅のみでは,角膜潰瘍形成は十分に阻害できないことを意味する。本研究では,角膜潰瘍のメカニズムを明らかにし特異的な角膜潰瘍の治療薬開発を本研究の目的としている。病原体由来のLPS, Poly : IC, Zymosanなどに反応し,種々のサイトカイン,ケモカインおよびコラーゲン分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼの発現,分泌を亢進させることを明らかにした。特にLPS, Poly : IC, Zymosanにてヒト角膜線維芽細胞を刺激すると、濃度及び時間依存性に種々のサイトカイン、ケモカインの発現、分泌が亢進した。中でもIL-6, IL-8及びMCP-1の三つが,LPS, Poly : IC, Zymosanで共通に分泌発現が亢進した。LPS及びPoly : ICはICAM-1, VCAM-1の発現を亢進させたが,一方でZymosanはそれらの発現に影響をおよぼさなかった。LPS,及びPoly : ICは,さらにMMP-1,2,3,9の発現分泌を亢進させた。Zymosanは,MMPの発現には影響を及ぼさなかった。本研究結果は,角膜潰瘍の発症機序の解明に大きく寄与し,薬物開発において新たな標的分子の開発につながると思われる。
|