2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21791758
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
太田 有紀 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究技術員 (60387066)
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Keywords | 脂肪組織 / 脊髄損傷 / 細胞治療 |
Research Abstract |
外傷性脊髄損傷モデルラットに対してadipose-derived stem/stromal cells(ASCs)を経静脈的に移植すると、障害を受けた後肢運動機能の回復促進効果が得られることをこれまでの研究で明らかにしている。本年度はASCsによる治療効果およびにその作用機序について検討した。 前年度同様、外傷性脊髄損傷モデルラットへのASCsの移植は対照群に比較して有意に運動機能が回復することを確認した。後肢運動機能評価終了後、脊髄組織を組織学的に検討したところ、ASCs移植群の脊髄では損傷による空洞部が小さく、軸索再生のマーカーであるgrowth-associated protein43を発現している細胞が多く認められた。 ASCs移植による治療効果として、ASCs由来の液性因子hepatocyte growth factor(HGF)、vascular endothelial growth factor(VEGF)および(β-nerve growth factor(NGF)に着目した。ASCsはこれらの因子を多量に産生・分泌していることを確認したが、ASCs移植は損傷脊髄および血液中におけるそれらの濃度に大きな影響を与えなかった。そこで、ASCs移植後に脊髄および血液中で変動する因子を明らかにするために、抗体アレイを用いてスクリーニングしたところ、好中球走化性因子CINC-1に強いスポットが得られた。さらにその発現の経時変化を検討した結果、脊髄、血液ともにASCs移植数時間後、一過性に上昇することが明らかになった。HGF,VEGF、β-NGF等の増殖因子に加え、ASCs自身によるCINC-1の産生・分泌も認められた。従来、炎症の指標とされるCINC-1が運動機能回復の促進に関与する可能性が示唆され、ASCsの移植効果として興味深い知見が得られた。
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