2010 Fiscal Year Annual Research Report
細胞骨格制御タンパク質による肺胞構築恒常化機構の解明
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21791772
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
橋本 壮志 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教 (60515279)
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Keywords | 急性肺損傷 / 肺線維化 / 肺胞構築 / 細胞骨格制御タンパク |
Research Abstract |
炎症反応過程に伴う重篤な肺損傷や、その後の不適切な修復反応による肺線維化による機能的肺胞障害に対して、臨床的に有効な治療法は未だ存在しない。このため、肺組織の損傷・修復メカニズムの解明は急性肺損傷/急性呼吸窮迫症候群(ALI/ARDS)を含む重篤な炎症性肺疾患に対する治療法を確立する上でも重要である。本研究は、細胞骨格制御タンパク質であるモエシンが、肺組織において肺胞上皮細胞に特異的に発現を認めることから、肺損傷・修復過程における機能的役割を探求することを目的として開始された。われわれは、モエシンを含むERMタンパク質群と細胞膜上で相互作用を示すと考えられる中性エンドペプチダーゼ(NEP)に着目した。NEPはALI/ARDS病態下で炎症反応を制御しうるが、生体内での酵素活性が低く、このため詳細な生理活性変化は明らかにされていない。このため、高感度測定法であるHPLC蛍光法にて、NEP活性を測定した。NEP活性はNEP活性阻害剤thiorphanで抑制される水解活性を指標とした。これにより、食道癌根治術後にALI/ARDSを発症した患者血漿中で、NEP活性が低下することを見出した。また同様に、肺損傷モデルマウスの血漿中および肺組織中における活性低下を認めた。こうしたNEP活性の低下は、免疫組織染色あるいは免疫ブロッティング法におけるタンパク質の発現抑制を伴っていた。一方で、気管支肺胞洗浄液(BALF)中においては、NEP活性は対照的に増加していた。こうしたNEP活性の変化は、ALI/ARDSの病態に少なからず影響を与える可能性がある。またNEP活性の変化は、ALI/ARDSの重症度指標としての可能性を示唆するものであり、本研究内容を2010年のRespiratory Research誌に発表した。
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