2010 Fiscal Year Annual Research Report
Wntシグナルによる間葉系幹細胞の細胞運命決定機構の解析
Project/Area Number |
21791799
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
内藤 昌子 日本大学, 歯学部, 助教 (40436803)
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 脂肪細胞分化 / 骨芽細胞分化 / Wnt/β-catenin |
Research Abstract |
本研究では、様々な組織の細胞分化や増殖を制御するWnt/β-cateninシグナルに着目し、間葉系前駆細胞分化における本シグナル経路の分子の発現および活性解析と機能解析を行なう。昨年度は、新生児ラット頭蓋冠に由来する間葉系前駆細胞のモデル細胞株であるROB-C26細胞を用いて、dexamethasone(Dex)誘導性脂肪細胞分化過程でWnt/β-cateninシグナルが抑制されることを明らかにした。本年度は、Wnt/β-catenin経路の細胞内シグナル伝達分子であり、骨形成に重要な役割を果たすβ-cateninの機能解析を行なった。未分化間葉系前駆細胞モデル細胞(C3H10T1/2,ROB-C26)を用いて、活性型β-catenin遺伝子を導入した。その結果、C3H10T1/2とROB-C26において、ALP陽性の初期の骨芽細胞分化が促進された。次に、ROB-C26細胞を用いて、β-catenin遺伝子のshort hairpin RNA (shRNA)導入することにより、β-catenin遺伝子の機能を阻害した。β-catenin遺伝子ノックダウンにより、ALP陽性細胞の数や染色性が減少した。また、これらの細胞において、Dex誘導性の脂肪細胞分化が促進された。遺伝子発現を検討したところ、β-catenin遺伝子のノックダウンにより、脂肪細胞分化を抑制する転写因子であるCOUP-TF II mRNA発現レベルの減少と、脂肪細胞分化に必須である転写因子、PPARγ2 mRNA発現レベルの増加が観察された。免疫組織学的解析により、β-catenin遺伝子をノックダウンした細胞において、Dex刺激によりPPARγ陽性細胞が多く観察された。一方、骨芽細胞分化に必須な転写因子であるRunx2やDlx5 mRNA発現レベルに変動は認められなかった。これらの結果から、ROB-C26細胞においてWnt/β-catenin経路は、脂肪細胞分化を制御する転写因子群(COUP-TF II, PPARγ2)の発現制御を介して脂肪細胞分化を抑制することが考えられた。
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