2009 Fiscal Year Annual Research Report
口腔細菌による硫化水素産生機構の解明と酵素の立体構造に基づく新規口臭予防薬の探索
Project/Area Number |
21791810
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
毛塚 雄一郎 Iwate Medical University, 薬学部, 助教 (50397163)
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Keywords | 酵素 / 細菌 / 薬学 / 硫化水素 / 立体構造 |
Research Abstract |
硫化水素は、口腔細菌の持つ酵素がL-システインを基質として作用した際に反応生成物の一つとして産生される。本年度は、口腔細菌に由来する3つの硫化水素産生酵素(Streptococcus anginosusおよびStreptococcus gordonii βC-SリアーゼとFusobacterium nucleatum Fn1220)のX線結晶構造解析を行った。βC-Sリアーゼについては、研究代表者らが決定した既存の結晶化条件をもとに基質アナログとの複合体結晶を作製し、X線回折強度データを収集した。いずれのβC-Sリアーゼにおいても、補因子であるピリドキサール-5'リン酸と基質アナログが共有結合した反応中間体との複合体の結晶構造を得ることに成功した。複合体結晶作製の条件を変化させることで、少なくとも2段階における反応中間体を捉え、その安定化に寄与すると考えられるアミノ酸が同定された。Fn1220の大量調製は大腸菌を宿主として行い、次いで3段階のクロマトグラフィーからなる精製条件を確立した。結晶化条件の探索および最適化を行い、X線回折実験に適した単結晶を得ることができた。分子置換法により2.0A分解能で結晶構造を決定した。非対称単位中の2つのサブユニットのうち、一方は触媒部位を含むクレフトが閉じた形を、他方は開いた形をしていた。クレフトの閉じたサブユニットには、補因子であるピリドキサール-5'リン酸の近傍に、結晶母液に含まれる酢酸イオンが結合していた。酢酸イオンの結合は、基質の結合の模倣であることが考えられた。Fn1220による基質分解は、クレフトの開閉という構造変化を伴う機構により行われることが推察された。
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