2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21791815
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
小野 弓絵 Kanagawa Dental College, 歯学部, 講師 (10360207)
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Keywords | 脳・神経 / 歯学 / 生理学 / 咀嚼 / 記憶 / MEG / fMRI / DSI |
Research Abstract |
誰もが日常的に行える「咀嚼」が,超高齢化社会を迎えた我が国の認知症予防法として注目されている。高齢化に伴い衰える認知機能が咀嚼により改善されることは既に多くの報告があるが,その神経機序は未だ不明である。本研究は,脳活動の正確な位置情報を観察するfMRI,皮質間の神経走行を描出するDSI,時間分解能が高いMEG,の3種類のヒト脳マルチモダリティ計測を用いて記憶活動に伴う脳内情報伝達経路の可視化手法を開発し,咀嚼刺激が認知機能改善に与える効果を脳科学の観点から定量的に抽出することを目的とした。 研究初年度の本年は,健常ボランティア被験者による短期記憶課題遂行時のMEGデータを計測し,(1)脳内神経活動の時空間変化を抽出するAdaptive Beamformer法を用いた記憶関連脳活動の可視化(2)SPMによる個人脳MRI画像の標準脳座標系への変換とブロードマンエリア同定による記憶関連脳活動の機能的同定(3)ガムチューイング効果の行動指標解析を行った。この結果,(a)過去のfMRI研究で報告のある複数の記憶関連皮質部位の活動がMEGによっても確認され,これらの脳部位が80%以上の高い時間相関を持って協調活動していること,(b)ガムチューイングにより長時間の記憶課題試行を行っても記憶負荷に依存するα波帯域脳活動が増大せず,円滑な記憶課題の遂行が促進されていることを明らかにした。特に(a)の時間的に協調した脳活動は時間分解能に乏しいfMRIでは観察できないものであり,時間分解能に優れたMEGとのマルチモダリティ計測によって初めて明らかになった結果である。これらの成果はInternational Journal of Bioelectromagnetism, Journal of Oral Rehabilitationなど脳科学・歯科医学系の国際雑誌へ発表した。
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