Research Abstract |
本研究では,細菌性負荷および食事性負荷が脳卒中モデルラット(SHRSP)の脳卒中の発症に及ぼす影響を検討した。食事性負荷の条件を検討する実験として,1%食塩含有飲料水と普通飼料を与える(高食塩負荷)条件,普通飲料水と高脂肪飼料を与える(高脂肪負荷)条件,1%食塩含有飲料水と高脂肪飼料を与える(高食塩高脂肪負荷)条件および食事性負荷を与えない(コントロール)条件で,SHRSPを少数(各条件n=2)飼育し,血圧を比較した。その結果,高食塩負荷の条件および高食塩高脂肪負荷の条件で飼育したSHRSPの血圧は,高脂肪負荷およびコントロールの条件で飼育したSHRSPの血圧に比べて著しく高い値を示した。一方,高脂肪負荷の条件で飼育したSHRSPの血圧はコントロールに比べてやや高かったが,その差は高食塩負荷とコントロールとを比べた差よりも小さかった。以上の結果からSHRSPの脳卒中の発症には,高脂肪負荷よりも食塩負荷が影響することが予想された。次に,1%食塩含有飲料水を与え、細菌性の負荷として静脈内に継続的にグラム陰性菌体内毒素(LPS)を1.0mg/kg投与する群,0.5mg/kg投与する群,およびこれを投与しない群に分けてSHRSPを飼育(各群n=12)し,血圧と脳卒中の発症を調べた。その結果,LPS 1.0mg/kgを投与する群の血圧は他の2群に比べ高値を示し,また,脳卒中の発症は,LPS投与群がLPS非投与群に比べて有意に早期化した。また,発症時の各群の症状を比較した結果,LPSを投与群では,体重変化,不活発、突然死に加えて,過敏,体毛の立毛,前後肢の麻痺などの様々な神経症状が認められた。一方,LPS非投与群の症状は,体重変化と前脚の麻痺のみであった。以上の結果から,高食塩負荷条件におけるLPSの持続的投与は,SHRSPの脳卒中の発症を促進する可能性が示唆された。
|