Research Abstract |
これまでに本研究では,脳卒中モデルラット(SHRSP)を用いて,グラム陰性菌による慢性感染を想定したE.coliおよびP.gingivalis菌体,あるいはグラム陰性菌体外毒素(LPS)の継続接種が,脳卒中発症の早期化と症状の重篤化を引き起こすことを明らかにした。本研究の最終年度では,脳卒中の発症に酸化ストレスが大きく関与すること,さらに,LPSが酸化ストレスを強く誘導することに着目し,LPSの継続接種がSHRSPの酸化ストレスレベルに及ぼす影響を調べた。 本研究では,4週齢のSHRSPを1%食塩含有飲料水を自由に与えて飼育した。5週齢から11週齢にかけて1.Omg/kgのLPSを週3回接種した群をLPS投与群,生理食塩水のみを投与した群をコントロール群とした。8週齢時に尾静脈から採血し,血清中の一酸化窒素(NO)の産生量を表す総窒素酸化物量(NOx),脂質の酸化ダメージを表すTBARS量およびDNAの酸化ダメージを表す8-OHdG量を,それぞれ測定した。また12週齢時には,全ての個体を屠殺後,脳を摘出して脳組織を分析した。その結果,8週齢時の血清中のNOx,TBARSおよび8-OHdG値の平均は,コントロール群に比べLPS投与群で有意に増加した。また,脳組織の病理組織像では,脳出血,梗塞および脳浮腫の所見がコントロール群に比べてLPS群で多く認められた。 LPSは,マクロファージや好中球の誘導型NO合成酵素の発現上昇を介してNOの産生を増加させることが知られている。また,血清中のTBARSおよび8-OHdG値は,脳組織中の酸化ダメージを反映することが動物実験で明らかにされている。本研究結果から,頻回なLPS接種は,NOの産生を促進し,SHRSPの脂質およびDNAの酸化ストレスを増加させ,脳卒中に伴なう脳組織の損傷を増大させる可能性が示唆された。
|