Research Abstract |
歯科用接着性修復材料の耐久性を改善するために象牙質再石灰化誘導活性を有する接着性モノマー,イオンを徐放するボンディング材を試作し,それぞれの石灰化誘導能についての評価を市販されているボンディング材との比較を行った.微小引張り試験において,新規開発モノマーCMETおよびCMEPの配合率が5%と10%の時に,コントロールの4-META/MMA-TBBレジンと同等の高い接着強さを示した.配合率が上昇するにしたがって接着強さが有意に低下した.象牙質接着界面SEM観察において,30%,50%および70%CMET配合レジンの象牙質接着界面には多孔質な欠陥構造が認められ,さらにレジンタグの形成が不完全な像が認められた.また,長期耐久性の評価として,長期水中浸漬における測定を行った.ワンステップボンディング材(HC)にCMETを5%配合したシーリングコート材を試作し,実験に用いた(CMET群)。コントロールとしてHCを用いた(HC群).試料として大臼歯16本を用いて,24時間後及び3,6ヶ月後の微小引張接着強さの測定を行い,Mann-Whitney検定で有意水準5%にて統計処理を行った.またSEMにて,引張試験後の破断面の観察及び,24時間後,3,6ヶ月後の接着界面の観察を行った,微小引張接着強さの測定において,CMET群とHC群の間で24時間後,6か月後において有意差が認められ,CMET群が有意に高い値を示した(p<0.05).微小引張試験後の破壊様式はHC群,CMET群,共に混合破壊が最も多く認められたが,HC群の6か月後においては界面破壊も多く観察された.CMET群は混合破壊と共に,コンポジットレジンでの凝集破壊も多く認められた.接着界面の観察においては,HC群では24時間後では良好な接着状態が確認できたが,3,6ヶ月後では接着界面に亀裂が多く入っていることが認められた,CMET群では24時間後,3,6ヶ月後共に良好な接着状態が確認された.これにより,象牙質接着界面において,CMETが脱灰象牙質再石灰化および長期耐久性に影響を与える可能性が示唆された.
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