2010 Fiscal Year Annual Research Report
歯髄硬組織形成調節機序におけるWntシグナルの役割解明に関する研究
Project/Area Number |
21791869
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
武藤 徳子 神奈川歯科大学, 歯学部, 特別研究員 (40510433)
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Keywords | Wnt / 歯髄 / 歯学 / 免疫学 / シグナル伝達 / 発生学 |
Research Abstract |
歯の発生は、上皮と間葉間の時間的・空間的相互作用(上皮間葉相互作用)で進行し、その際、骨形態形成因子(BMP)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ウイント(Wnt)、ソニックヘッジホッグ(Shh)、腫瘍壊死因子(TNF)などのツールキット遺伝子と呼ばれるシグナルが中心的な役割を果たす。最近、歯の大きさが歯胚間葉のシグナルに規定されることが明らかになっているが、BMPやFGFが歯胚間葉に発現しているにも拘わらず、これからのシグナルは歯胚の大きさには影響を与えないことが分かっている。一方、Wntシグナルは歯の発生過程で発現が見られるが、Wnt5aのみが歯胚間葉に発現する。そこで本研究では、歯の発生過程におけるWnt5aの発現パターンを解析すると共にWnt5aシグナルが歯の大きさに及ぼす影響を検索した。 本実験では、Wnt5a遺伝子発現を胎生期から生後の歯髄形成過程までin situハイブリダイゼーション法にて解析した。またWNT5Aの機能獲得実験として胎生14日の臼歯歯胚を摘出し、器官培養系でビーズを用いWNT5A過剰発現が歯胚形成に及ぼす影響および細胞死阻害剤(z-VAD-fmk)の併用によりアポトーシスとの関連も調べた。 WNT5Aの過剰発現は歯胚周囲領域の細胞死を誘導し、結果として歯胚形成を遅らせ、歯の大きさが小さくなり、咬頭の高さが低くなることが明らかとなった。一方歯胚領域においては、Wnt5a、Fgf10、Bmp4、Shh相互作用により細胞死がレスキューされた。 今後は、マウス臼歯の他家移植実験を用いて歯髄形成過程における神経堤由来歯髄幹細胞とその他の細胞群との相互作用を検索するとともに、神経堤細胞の維持と分化に重要な役割を担っているWntシグナルの関与を明らかにする予定である。
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