Research Abstract |
睡眠時無呼吸症候群の治療において口腔内装置には,睡眠時に下顎を前方位に固定することで気道確保する可撤式の装置が広く用いられており,その適応症は,PSG検査でAHIが軽度~中等度の症例,あるいはCPAP療法の適応とならない症例とされている.しかしながら,実際には重度でも口腔内装置が有効であった症例が報告されていることや,逆に,軽度~中等度であっても口腔内装置が有効でなかった症例が報告されており,有効率さまざまである.このにとは,口腔内装置の効果は100%ではなく症例ごとに適応か否かを判断する必要があることを意味している.しかしながら,臨床現場では,閉塞部位の評価・診断を行わず盲目的に口腔内装置の適応・作製が行われ,装置が完成した後に医科でのPSG検査にてはじめて治療効果が判定され,口腔内装置の効果は治療前・治療途中に予測が出来ず,装置が完成するまで分らない状況である.口腔内装置の適応症が明示できていないために,診断医である医科は,その予知性の低さから,治療法として口腔内装置を選択することが困難である.医科・歯科の連携医療を行うためにも,口腔内装置の適応症を明確にする必要がある. 本研究により,内視鏡を用いて,睡眠時無呼吸症候群患者の中心咬合位や下顎前方位での咽頭腔を観察し,咽頭腔の開大の程度から,口腔内装置の治療効果を予測できる可能性が示唆された. 本研究により,口腔内装置治療の適応症を明確に判定できること,また作製段階で咽頭腔の開大度を視認できるため,無駄な試行を繰り返す必要がなく早期に効果的な口腔内装置を完成させることができるなどの臨床効果が期待できる.その結果,通院回数を減らすことや装置の効果判定のために行うPSG検査の施行回数を減らすことができ,医療費の節約や患者負担(時間・費用など)の軽減,医療者の診断力の向上など,社会経済的にも医療技術的にも成果が期待できる.
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