Research Abstract |
今年度は,これまでに確立されたパウダージェットデポジション(PJD)法の噴射条件を用い,エナメル質にハイドロキシアパタイト(HAp)を成膜した.その後,HAp膜が口腔内において石灰化が期待されることから,生体外(In vitro)の実験により,HAp膜の石灰化を検討した.HAp膜を浸漬する溶液は擬似体液(SBF)を使用し,浸漬5時間後,24時間後,7日間後のHAp膜を評価した.評価は非接触3次元測定装置を用いて表面形状を測定し,マイクロビッカース硬度計により硬度を測定した.その後,HAp膜断面の組成分析を行うために,エネルギー分散型X線回折装置(EDX)を用い,断面の形状観察を行うために,走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた.非接触3次元測定の結果ではHAp膜をSBFに浸漬して,5時間後,24時間後,7日間後,いずれも膜の溶解はみられなかった.また,硬度測定の結果から,SBF浸漬前と7日間浸漬後のHAp膜の硬度に有意差はみられなかった.SEM付属のEDXによる断面の組成分析の結果から,エナメル質とHAp膜の組成に違いは見られなかった.浸漬7日間後のSEMによるHAp膜断面の形状観察においては,膜が均一で緊密であり,隙間の無い構造である事が確認できた.TEMによる観察ではHAp膜表層から約7.5μmの間の上層と下層ではディフラクションパターン(電子回折図形)が少し異なる事から,配向の違い,つまり層の構造の違いが明らかとなった.この結果より,何層にも成膜した場合では,上層と下層で構造が異なるという可能性と共に,SBFがHAp膜最表層に何らかの影響を与えている可能性も示唆された.
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