Research Abstract |
本研究では,生体用金属材料として代表的なTi合金及びCo-Cr合金の生体内環境内でのフレッティング摩耗について,環境因子である疑似体液の影響や荷重,往復移動振幅やフレッティング周波数等の力学的パラメータの影響について調査し,また環境因子や力学的因子に関する系統的な情報を得ることを目的とした.今年度は,試験機は往復摺動摩耗試験機にピエゾステージ及び37℃加熱装置と液受けバットを付加した摩耗試験機を作製し,そのデータを検証すると共に,摩耗表面の組織観察及び元素分析を行った. Ti-6Al-7Nbを被摩耗材とし,相手材をZrO_2,ボールとして液中でフレッティング試験を行った.潤滑液は,純水及び人工唾液を用いた.摩耗量の往復振幅,振動数や接触面圧力等の力学的パラメータの影響について調査した. その結果,往復運動における摺動距離-摩擦力の変動はスライディング摩耗に比べて非常に小さい.しかし,スライディング摩耗では平均摩擦係数は0.5程度であるのに対し,往復摺動のフレッティングでは,スライディング摩耗に比して高い傾向を示し,荷重に対する摩擦係数への依存性は小さい.ただし,フレッティング摩耗では同方向の摺動ではないため,動的摩擦係数の定義について更に検討する必要があると考えられた. 摩耗表面のモフォロジー観察と組成分析を行うため,走査電子顕微鏡(SEM)および電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用い,摩耗試験後の表画観察と化学分析を行った.硬いZrO_2ボールは摩損が見られず,被摩耗材の摩耗表面にもZrは検出されなかった.一方,摩耗痕周辺には人工唾液成分からの析出と見られる表面膜が形成され,数μm径の微細析出物も観察されたことから,境界潤滑的挙動が示唆された.摩耗表面は加工硬化と酸化による表面クラックや剥離が発生するが,これらは往復運動の振幅中心付近に見られ,また酸素濃度が高い箇所は剥離中心部分に見られることから,常に摩擦を受ける振幅中心部での高い加工硬化に加え,潤滑液成分と酸化が発生した部分に初期クラックが発生し,そこを基点として加工硬化した周辺部と共に剥離が起こると考えられた.
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