2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体用合金の疑似体液中でのフレッティング摩耗挙動とメカニズム
Project/Area Number |
21791944
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
三浦 永理 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (70315258)
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Keywords | 生体材料 / 摩擦磨耗 / フレッティング / 歯科理工学 / 材料変形 |
Research Abstract |
本研究では,生体用金属材料として代表的なTi合金やCo-Cr合金を代表とする金属基生体材料の生体内環境内でのフレッティング摩耗について,環境因子である疑似体液の影響や荷重,往復移動振幅や周波数等の力学的因子の影響について調査し,また環境因子や力学的因子に関する系統的な情報を得ることを目的とした. これまでの種々のTi合金のフレッティング摩耗表面および断面観察の結果では,表面の結晶粒微細化は見られず,加工変形層が表面に形成される.また,摩耗表面の酸素濃度の増加が著しく,その様な場所では表面疲れやα粒界での粒界割れが観察された.結晶粒微綱化層が導入されない事は,スライディング摩耗のX線回折による残留ひずみ測定でも明らかにされている.Hap相単相のCP Tiおよびbcc相単相のTi-15Mo-5Zr-3Al(TMZA)合金で摩耗試験を行った結果では,TMZAの摩擦係数はCP Tiのそれよりも高く,また摩耗量もTMZAの方が高い。両試料の摩耗痕の組織観察や組成分析の結果,この原因の一つとして,材料の力学特性と酸化の程度の違いによる摩耗粉の発生しやすさが関係していると考えられた.すなわち,TMZAの延性はCP Tiより低く,硬度も高いため,凝着摩耗が発生した場合に凝着部の離脱が起こりやすいと考えられた.実際に,TMZAの摩耗痕表面はCP Ti量と比較して粗く,より多くの摩耗粉が発生やすいと考えられ,その摩耗粉が砥粒となることでより摩耗が増加すると考えられる.酸化に関しては,EPMAの結果から摩耗痕表面にはほぼTiO_2に匹敵する高濃度のOの存在が確認され,AESの状態分析の結果から,摩耗表面付近はRutileと金属Tiの混在する組織となっている事が示唆された。そのため,酸化による脆化の大きい部分が荷重により破壊され,表面剥離が引き起こされると考えられた.表面から一定の厚さで剥離する表面疲れは,このようにして発生すると考えられる.これらの剥離片も摩耗粉となると考えられ,摩耗量の増加を促進すると考えられる.
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