2010 Fiscal Year Annual Research Report
歯根破折防止を可能にするヒト歯質のフラクトグラフィ解析による歯の疲労寿命予測
Project/Area Number |
21791950
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
井上 利志子 昭和大学, 歯学部, 研究補助員 (90398701)
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Keywords | 歯 / 歯根 / 象牙質 / 強度特性 / 疲労強さ / 引張強さ |
Research Abstract |
口腔領域は摂食をはじめとして多くの重要な機能を担っており,歯の強度特性を検討することは重要なことであると思われる.歯は歯冠部分と歯根部分からなり,歯根部での破折は歯冠部とは異なる様相を呈し,重篤な症状になり,抜歯になる可能性も高い. 今年度は新規に開発および作製した治具および水中試験装置を用いて,歯根象牙質の疲労試験を行い,さらに同部位での引張試験も行ったところ,歯根象牙質の疲労強さは引張強度の約半分程度であることが明らかになった,すなわち,引張試験においては歯軸方向では歯冠象牙質は歯根象牙質よりも小さな値を示すが,疲労試験においては,歯根象牙質は歯冠象牙質よりも小さな値を示すことが明らかとなり,疲労試験と引張試験では逆の結果を示した. 象牙質をコラーゲンとハイドロキシアパタイトから成る複合材料として考えた際に.疲労や引張試験などの機械的強度にはコラーゲンが影響を与えるとされている.したがって,これらの事象の起因としてはコラーゲンの配向が関与していることが推察された.すなわち,歯冠象牙質は象牙質内に均質に配向しているが,歯根象牙質は歯軸方向に多く配列し,象牙質内に片寄りが見られることが報告されている.つまり,歯根象牙質中のコラーゲンの偏向が歯根象牙質の脆弱化を招いたと考えられる.また,疲労および引張試験後の破断面を電子顕微鏡にて観察を行ったところ,疲労破断面に特徴として現れるストライエーションについては,間隔は3から10ミクロンを示した.これは従来報告されている歯冠象牙質の約5分の1から10分の1程度であり,歯冠象牙質に比べて,歯根象牙質の脆弱性がより明らかとなった.
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