2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21792013
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
熊丸 渉 九州大学, 大学院・歯学研究院, 助教 (90432947)
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Keywords | 癌ワクチン療法 / CTL / 口腔癌 |
Research Abstract |
申請者らはこれまで発見されたさまざまな扁平上皮癌由来の癌抗原ペプチドを用いて、口腔扁平上皮癌患者の末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells;PBMC)より細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocytes;CTL)の誘導を試みた。SART-1、2,3、CyB、lck、ART4など13種類の腫瘍関連抗原ペプチドでPBMCよりCTLの誘導を試みたが、2.9%~22.0%であった。20%を超えたものは、SART-1_<690-698>、SART-2_<93-101>,ART4_<75-84>の3種類のペプチドのみであった。誘導率が低かったのは患者ごとにhuman leukocyte antigen(HLA)-class I上の癌抗原ペプチドが異なるためであった。よって既存の抗原ペプチドを用いた癌細胞主導型のワクチン療法には限界があり、患者ごとに癌抗原(ペプチド)を同定するT細胞主導型ワクチン療法[テーラーメイド医療]の開発が望まれている。 癌抗原の単離同定法は、癌細胞株を樹立して遺伝子解析する方法が一般的であるが、切除物(癌組織、正常組織、腫瘍浸潤リンパ球、転移リンパ節の癌活性化リンパ球、線維芽細胞)のみで癌抗原の同定を可能とした方法の開発を進めている。効率よく実験を進めるために、口腔扁平上皮癌50症例について臨床病理学的な検討を行った。一次転移10症例及び後発転移13症例と非転移27症例との比較をするために原発部位の腫瘍浸潤様式、免疫細胞の間質反応、血管新生などについて免疫組織学的検討を行った。転移のしやすさは腫瘍浸潤様式のYK-4C,4D症例の方がYK-1,2,3症例より有意に多かった。これらは5年生存率にも重要な予後因子であった。免疫反応が活発に行われている場所であり、繰り返し実験可能な検体が得られる転移リンパ節より癌細胞、リンパ球、線維芽細胞の培養を試み、癌細胞株の樹立が成功した1症例について実験を進めている。CTLを効率よく誘導する条件、リンパ球の種類、癌遺伝子を直接同定しなくてもCTLを誘導させる方法に現在取り組んでおり、今後、癌細胞株からの遺伝子との照合が可能であれば、実験の目的が達成されるものと思っている。
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