Research Abstract |
一般に宿主上皮細胞では,細菌やウイルスなどの病原体構造物を認識できる生来のレセブター(自然免疫レセプター)を発現しており,炎症やアポトーシスと言った免疫応答を引き起こすことが知うれているが,口腔や咽頭などの上皮細胞は,常に多くの細菌に晒されている環境にあることから,リガンド物質で刺激しても容易には炎症応答は増大せず,他の要因によって炎症を起こしたり,長期にわたる刺激を受けた場合にのみ強い免疫応答を生じると考えられている.本研究では,口腔細菌叢のうち代表的なビリダンスレンサ球菌,齲蝕原性レンサ球菌,化膿レンサ球菌を用い,ヒト由来培養口腔・咽頭上皮細胞に感染させた場合の細菌の動態を観察し,宿主細胞に免疫応答を生じさせうるのか,またはどのような免疫応答が生じるのかについて検討した.研究の遂行にあたり,菌株の上皮細胞への付着・侵入能の測定し,共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞内への細菌侵入の観察を行った.さらにリアルタイムPCR法やELISAによる細胞からの炎症性サイトカイン,抗菌物質の発現を解析した.その結果,多上の口腔レンサ球菌は,口腔内においては特に病原性を示さないと考えられてきたが,いくつかの菌種,特にS.sanguinisには細胞への付着・侵入能を有し,強く炎症応答を有する菌株があること,ヒト上皮細胞は自然免疫レセプターに対するリガンド刺激に対し,抗菌物質を産生はするものの炎症応答のような強い免疫応答は起こさないと考えられている.しかし,細胞内に侵入したり,長時間にわたって細胞に付着するような強い刺激があ加わると炎症応答を起こしうること,このような菌が口腔内に大量に存在すると口腔粘膜などに疾患を生じる原因となる可能性があることが明らかとなった.
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