2010 Fiscal Year Annual Research Report
小児の口腔アレルギー疾患に関与する口腔レンサ球菌と自然免疫応答の破綻
Project/Area Number |
21792069
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
櫻井 敦朗 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (90431759)
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Keywords | レンサ球菌 / 自然免疫 / 口腔細菌叢 |
Research Abstract |
口腔は,齲蝕を発生させるミュータンスレンサ球菌をはじめ600種を超える細菌種が存在するといわれる.そのため,口腔や咽頭粘膜の上皮は常に細菌の存在を認識していると考えられる.しかし口腔や咽頭の上皮細胞は微生物の構成成分を認識できる生来のレセプター(Toll様受容体,Nod様受容体)を発現しているにもかかわらず,これらに対するリガンドによる刺激を加えてもほとんど炎症性サイトカインが産生されない.このため,上皮細胞では通常,口腔内細菌に対してすぐには炎症性応答を起こさない状態に制御されているが,他の要因によってひとたび炎症を起こしたり,リガンドの細胞内外への長時間の定着を許したりした場合にはさらに強い免疫応答を引き起こす原因になると考えられている.本研究では,特に病原性を示すことはないと考えられていたサングイスレンサ球菌の一部にも上皮細胞内へ侵入する能力があって,その結果上皮細胞の炎症性サイトカイン産生増強,免疫担当細胞の遊走を促すことを明らかにした.さらに線毛構造をつくるタンパク(pili)の有無がサングイスレンサ球菌の細胞侵入性に大きく影響することがわかった.口腔内に多く存在する一つの菌種でも,piliのほかさまざまな因子の有無によって生体に対する病原性が大きく異なり,その機能によってアレルギー疾患やその他の疾患の原因になっている可能性が示唆された.ヒトの複雑かつ多彩な口腔内細菌叢を考えたとき,現在でも培養のできない,研究の進んでいない菌種は多く,口腔内・全身疾患の発症に直接的,間接的に関与している菌もまだまだ多いと推察される.
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