2010 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子医薬開発を目的とした口蓋粘膜創傷治癒における瘢痕形成メカニズムの解明
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21792078
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
泰江 章博 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80380046)
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Keywords | 遺伝子医薬開発 / RNAi / Smad3 / 瘢痕形成抑制 / SIS3 |
Research Abstract |
口唇裂・口蓋裂患者における裂隙閉鎖術後の瘢痕組織はその強い瘢痕鈎縮により、上顎骨劣成長や上顎歯列弓狭窄をもたらし、その結果患者は重篤な不正咬合を呈する。一方、TGF-βのシグナル伝達因子の1つであるSmad3のノックアウトマウスでは、創傷治癒促進・瘢痕形成抑制が認められる。本研究は、Smad3遺伝子を抑制することでノックアウトマウスの創傷治癒過程において見られる所見の再現を念頭に置きつつ、創傷治癒過程における瘢痕形成メカニズムの分子レベルでの解明、瘢痕形成抑制法の発展を目的として実験を行った。手法としては当初提案していたRNAi法の代わりに、Smad3リン酸化特異的阻害剤であるSIS3を用いて副作用の軽減を図った。 新生野生型マウス由来線維芽細胞の初代培養を行い、SIS3によるSmad3リン酸化抑制効果をウエスタンブロット法にて確認した。次に同マウスの上皮細胞初代培養系において遊走能を検討した結果、SIS3添加群においてやや亢進し、このことよりSmad3抑制による上皮細胞の創傷治癒促進能が示唆された。一方、線維芽細胞においては炎症関連因子の発現におけるSIS3の効果をTGF-β1存在下で検討した。その結果、SIS3添加群においてMCP-1発現は優位に減少した。また、瘢痕収縮は線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化により生ずるが、そのマーカーであるα-平滑筋アクチンの発現にも有意な減少が見られた。さらにコラーゲンゲルを用いた線維芽細胞の3次元培養では、TGF-β1存在下でのゲル収縮率がSIS3添加群では優位に減少した。これらよりSmad3のリン酸化抑制が瘢痕組織形成抑制効果をもたらすことが示唆された。さらに、SIS3のin vivoにおける効果を検討するため口蓋に作製した創傷にSIS3を適用し、添加群において炎症性反応の抑制に伴う創傷治癒促進効果が認められた。
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