2009 Fiscal Year Annual Research Report
P. gingivalisによるDC-SIGNを介したTh1応答のエスケープ機構
Project/Area Number |
21792108
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
多田 浩之 Tohoku University, 病院, 医員 (70431632)
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Keywords | 免疫学 / 樹状細胞 / 細胞・組織 / サイトカイン / DC-SIGN |
Research Abstract |
樹状細胞(DC)は、自然免疫応答と獲得免疫応答の両方に重要な役割を担う抗原提示細胞である。DCが発現するC型レクチンレセプター(CLR)は免疫寛容の誘導に関わると同時に、CLRであるDC-SIGNは病原性細菌のターゲットレセプターとしてDCからIL-10が生産されることで、細菌の排除に必要なTh1細胞の誘導が抑制されることにより感染が慢性化することが示唆されている。成人性歯周炎は歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalis(Pg)による慢性炎症が特徴であり、Pgが歯周組織における免疫反応による排除を逃れ、慢性的に生存し続けることがその一因と考えられている。 Pgを含む細菌を構成する細胞壁の一成分であるiE-DAPは、細胞質に発現するレセプターであるnucleotide-binding oligomerization domain 1(Nod1)により認識されることで自然免疫応答を発揮することが知られているが、DCによる獲得免疫の誘導におけるNod1の機能はほとんど解明されていない。そこで、DCが発現するNod1による獲得免疫の誘導について、CD8^+T細胞が細胞傷害性T細胞(CTL)に分化するために必要なクロスプライミングに対するNod1の関与について検討した。その結果、抗原により誘導されるDCのクロスプレゼンテーションは、Nod1刺激物質であるiE-DAPを野生型マウスに刺激すると増強されたのに対して、Nod1ノックアウトマウスではその増強作用はみられなかった。さらに、iE-DAPによりDC上の共刺激分子の発現が亢進した結果、CTLの活性が増強された。以上の結果から、DCによるクロスプライミングはNod1依存的に増強されることを見いだした(J.Immunol., 184 : 736-745, 2010)。 また、PgによりDCから生産されるサイトカインについて検討した結果、PgによりDCからIL-10の生産が誘導された。さらに、細菌の内毒素(LPS)によるDCからのIL-10の生産は、Pgを添加すると増強されたのに対して、IL-6生産の誘導は変化しなかった。これらの研究成果に基づき、今後はPgにおけるDCからのIL-10生産の増強作用が、DCが発現するDC-SIGNを介する可能性について検討する。
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