2009 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病における酪酸の歯肉線維芽細胞を介したT細胞機能障害の機序解明
Project/Area Number |
21792131
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山田 潔 Nihon University, 歯学部, 助教 (30313076)
|
Keywords | 歯肉線維芽細胞 / 歯周病原性細菌 / 短鎖脂肪酸 / 酪酸 / T細胞 / 抗原提示細胞 / 細胞死 / サイトカイン産生 |
Research Abstract |
本研究では歯周病原性細菌が産生する短鎖脂肪酸の一つである酪酸に対する歯肉線維芽細胞(GF)の応答が、T細胞応答にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的としている。そこで今年度は1)酪酸が直接的にT細胞応答に及ぼす影響、2)酪酸がGFに作用したときに発現が変化する遺伝子について検討した。 ヒトT細胞株を異なる濃度の酪酸ナトリウム存在下で24時間培養した結果、酪酸濃度依存的な細胞生存率の低下、アポトーシスに伴う染色体DNAの断片化が認められた。この酪酸依存的な細胞死は、抗原提示細胞にもなり得る単球/マクロファージのヒト細胞株でも同様に認められた。また、酪酸を産生する歯周病原性嫌気性菌の培養上清を添加しても、細胞死が同様に誘導された。マウス脾臓T細胞由来のヘルパ-T細胞(Th1、Th2)に対しても、酪酸は細胞死とサイトカイン産生抑制を誘導した。一方で、正常GF株や口腔上皮細胞株では、酪酸による細胞死誘導は顕著には認められなかった。これらの結果から、T細胞および抗原提示細胞となるマクロファージは酪酸により直接的な傷害を受けるが、正常GFでは顕著な細胞死は誘導されないことが示唆された。 健常者あるいは歯周病患者から単離されたGF株(HGF株、PGF株)では、酪酸による細胞死に違いがあることが報告されている。そこで、酪酸による細胞死に感受性が高いPGF株と、低感受性のHGF株を酪酸で刺激し、遺伝子発現の変化を比較した。その結果、線維芽細胞増殖因子(FGF)とその受容体(FGFR)のいくつかの遺伝子において、HGF株とPGF株で、恒常的な発現量あるいは酪酸依存的な発現量変化に違いがあることが明らかとなった。これらのサイトカインおよび受容体遺伝子の発現異常が、HGF/PGFの酪酸に対する応答性や免疫応答に及ぼす作用の違いに関与する可能性が考えられた。
|
Research Products
(4 results)