Research Abstract |
本研究は,歯周病によるアテローム性動脈硬化初期病変モデルラットを用いて,ビタミンCによる歯周病由来の動脈硬化初期病変の抑制機序を,酸化ストレスの観点から解明することを目的とした。 平成21年度では,歯周病によるアテローム性動脈硬化初期病変誘発モデルラット,ビタミンC投与ラットおよび対照ラットとの間にアテローム性動脈硬化の病変に差があるかどうかを検討した。8週齢のWistar系雄性ラット30匹を1)対照群(通常飼育),2)アテローム性動脈硬化初期病変群(下顎臼歯に絹糸を巻き、歯周病およびアテローム性動脈硬化を惹起させ,その後蒸留水を飲ませた),3)ビタミンC投与群(歯周病および動脈硬化を惹起させ,ビタミンCを投与)の3群に分けた。 6週間の実験期間終了後,全身麻酔下で屠殺し,歯周組織と大動脈を評価した。 歯周組織では,アテローム性動脈硬化初期病変群で歯周炎が誘発されていることを確認した。ビタミンC投与群では,歯周組織の炎症が軽減していた。 大動脈では,アテローム性動脈硬化初期病変群において,動脈内膜に脂質の沈着がみられ,ヘキサノイルリジン(過酸化脂質),8-OHdG(酸化DNA損傷)およびナイトロチロシン(タンパク質の酸化)の値が対照群に比べて有意に高くなっていた。ビタミンC投与群では脂質の沈着が減少し,ヘキサノイルリジン,8-OHdGおよびナイトロチロシンの値がアテローム性動脈硬化初期病変群に比べて有意に低くなっていた。 以上のことから,歯周病によるアテローム性動脈硬化初期病変モデルにおいて,ビタミンCは動脈の酸化ストレスを抑制することが示唆された。 平成22年度は,平成21年度に採取した遺伝子を用いて解析を行う予定である。
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