Research Abstract |
肥満に伴う血液中の活性酸素種の増加は,歯肉の酸化ストレスを高める。運動による肥満の予防は,血液中の活性酸素種の増加を抑え,歯肉の酸化ストレスを軽減するかもしれない。そこで本研究では,高脂肪食によるラット肥満モデルを用いて,運動による肥満予防が歯肉の酸化ストレスに及ぼす影響を調べた。さらに,酸化ストレスが歯周病の進行に関わることから,歯周組織への影響についても検討を加えた。 8週齢ウィスター系雄性ラットを,各群7匹ずつ3群(標準食群,高脂肪食群,および高脂肪食+運動群)に分けた。運動は,ラット用トレッドミルを用いて,1週間に5回の頻度で行った。8週間の実験期間終了後,採血と歯周組織の摘出を行い,血清reactive oxygen metabolites(ROM)濃度と血清C反応性蛋白(CRP)濃度,および歯肉の酸化損傷の指標として8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)濃度を計測した。また,歯周組織の形態学的変化を調べるため,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色およびRANKL抗体と酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)による二重染色を行なった。なお,統計分析にはTukey法を用いた。 高脂肪食群では,標準食群よりも体重,血清ROM濃度,血清CRP濃度,歯肉8-OHdG濃度,歯周組織中の好中球数,および歯槽骨上のTRAP陽性破骨細胞がそれぞれ有意に高い値を示した(P<0.05)。一方,高脂肪食+運動群では,高脂肪食群よりも体重,血清ROM濃度,血清CRP濃度,歯肉8-OHdG濃度,歯周組織中の好中球数,歯槽骨上のTRAP陽性破骨細胞がいずれも有意に低い値を示した(P<0.05)。 運動による肥満予防は,血清の活性酸素種の増加を抑えることで,歯肉の酸化ストレスおよび歯周組織の炎症を低下させる効果があることが示唆された。
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