Research Abstract |
近年,肥満は歯周病を悪化させることが明らかになっており,その機序には酸化ストレスの関与が指摘されている。肥満予防に有効な手段として運動があげられる。運動は,酸化ストレスを減少させるといわれている。従って,運動による肥満予防は,歯周組織にも有益な影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究では,高脂肪食によるラット肥満モデルを用いて,運動による肥満予防が歯周組織に及ぼす影響を検証した。 8週齢Wister系雄性ラット24匹を用いた。高脂肪食群と高脂肪食+運動群にそれぞれ12匹ずつ割り当て,各群の6匹を4週間後,そして残り6匹を8週間後に屠殺した。実験期間中,両群とも高脂肪粉末飼料を与えた。高脂肪食+運動群は,ラット用トレッドミルを用いて週5回の頻度で運動させた。実験期間終了後,内臓脂肪,皮下脂肪,血液および歯周組織を採取した。血液からはd-ROMsテスト値とOXY吸着テスト値を測定した。また,組織標本を作製し,ヘマトキシリン・エオジン(H-E)染色とニトロチロシン染色を行った。 体重および内臓脂肪において,4週間,8週間いずれも高脂肪食+トレーニング群が高脂肪食群に比べ有意に低い値を示した。皮下脂肪量においては,4週間では両群に有意差はなく,8週間で高脂肪食+トレーニング群が高脂肪食群に比べ有意に低かった。血清のd-ROMsテスト値,ニトロチロシン陽性細胞数および好中球数に関しても,4週間で両群に有意差はなく,8週間で高脂肪食+トレーニング群が高脂肪食群に比べ有意に低い値を示した。血清のOXY吸着テスト値は,4週間で両群に有意差はなく,8週間で高脂肪食+トレーニング群が高脂肪食群に比べ有意に高い値を示した。 高脂肪食を摂取させたラットに対して運動トレーニングを行なうと,肥満を予防できた。それに伴い,血清の酸化ストレスを抑え,歯周組織の酸化ストレスと炎症を抑制する効果があることが示唆された。
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