2010 Fiscal Year Annual Research Report
褥瘡発生に関わる基礎的研究―皮膚・筋肉の構成細胞の加圧刺激に対する応答―
Project/Area Number |
21792175
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
高田 直子 帝京大学, 医療技術学部, 講師 (10432303)
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Keywords | 褥瘡 / 皮膚繊維芽細胞 / 機械的刺激 / 低酸素刺激 / 細胞外マトリックス / BMPファミリー |
Research Abstract |
本研究の目的は、褥瘡発生プロセスには圧という機械的刺激への細胞応答に始まる一連の細胞反応が関与するという仮説を検証することである。 平成22年度の研究結果としては、より生体に近い(弾力性のある)モデルの作成を目指し、ヒト皮膚線維芽細胞をカイコフィブロインスポンジ内で培養する方法を検討した。その結果、細胞浮遊液には従来の3次元培養の際に用いていたコラーゲンを含有しない培養液のみを用い、培養は撹拌させながら行う方法が最も細胞増殖効率が高いことを明らかにできた。また、カイコフィブロインスポンジが他の市販されている培養スポンジよりも培養効率は高いことも明らかにした。 また、血管拡張因子であるシクロオキシゲナーゼ(COX)-2は皮膚繊維芽細胞への加圧刺激によって、その発現を増強させることを明らかにしたうえで、他研究者との共同研究によって生体における早期褥瘡での組織学・組織化学的な確認を行った。その結果、Stage I褥瘡では、血管拡張は認めるが免疫染色の結果では、COX-2よりも別の血管拡張因子でありNO合成酵素であるeNOSが関与している可能性が見えてきた。 平成21年度に確認した「新たに圧に対して反応する遺伝子」に関して研究を継続し、皮膚繊維芽細胞は加圧刺激によって骨形成因子(BMP)ファミリーであるBMP-6の発現を増強させることを明らかにし、先述した共同研究によって生体での発現も確認できた。これは、これまで褥瘡に関与する可能性が述べられていないタンパク質の遺伝子であり、重要な発見であると言える。今後は、褥瘡の発生プロセスのほかに治癒経過との関連性を経時的に追っていくことも重要な意味を持つと考える。 以上のことから、今年度の結果も褥瘡の発生には機械的刺激に対する細胞の反応が関与していることを示すものであると考える。
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