Research Abstract |
1.妊婦の歯周病対策として歯周病菌スクリーニング(Aa菌,Pi菌,Pg菌,Tf菌)の有効性を明らかにすることを目的とした。妊娠初期から分娩期まで追跡できた妊婦80名に対し,縦断調査を行い,歯周病菌の消長と歯周病関連症状との関連を明らかにした。 当初の実施計画では,歯周病菌と妊婦の抗酸化能との関連も予定していたが,予算の制限があり,また測定を行わなくても,十分な結論が得られると判断し,測定を行わないこととした。 2.妊娠初期では,歯周病関連症状の「歯肉の腫れ」とPg菌数およびTf菌数に有意な関連が認められた。肥満は歯周病のリスク要因であるが,妊婦のBMIとTf菌数との間に正の相関が認められたことから,Tf菌およびPg菌は,スクリーニングの意義が大きいと思われた。しかし,その後の縦断的調査からPi菌とPg菌の2菌の重要性が示された。特にPi菌は,歯周病関連症状と親密な関係が示され,妊娠10-13週および30-35週ともにPi菌が陽性であった妊婦は,歯周病関連症状5項目中「易出血」「歯肉に腫れ」「歯のぐらぐら感」「口臭」の4症状が有意に高頻度で認められた。また,Pi菌またはPg菌が末期のみ陽性または初期のみ陽性だった妊婦は非常に少なく,Pi菌およびPg菌が妊娠初期に陽性の妊婦の大部分が妊娠末期も陽性のまま経過していた。これは,Pi菌およびPg菌の除去は通常の口腔ケアでは難しいことを推測させるものであった。 3.妊婦の歯周病対策として唾液中の歯周病菌スクリーニングにおいて臨床的に有効と考えられた菌種は,Pi菌,Pg菌であったが,口腔内からの除去は一般の口腔ケアでは難しいことが示唆された。従って,妊娠初期から唾液中にPi菌,Pg菌が検出される妊婦には,産科施設と地域の歯科施設の専門分野を超えた連携を構築し,より積極的な口腔ケアの介入を行うべきと考える。
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