2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21792265
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
井上 貴雄 山口大学, 大学院・医学系研究科, 学術研究員 (80513225)
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Keywords | 超音波 / 泣き声 / 乳汁分泌 / NIRS / オキシトシン |
Research Abstract |
1)超音波成分を含む泣き声による胸部血流の上昇に泣き声の認知が関わっているのか、あるいは音響成分のみが重要なのかを調べるため、被験者が泣き声と認識できないようフォルマント成分を消去したスクランブル音(Bellin et al., 2002)を授乳中の母親に呈示した。泣き声の呈示は胸部血流を上昇させることを再確認した。一方で、泣き声のスクランブル音を呈示しても、胸部の血流は上昇しなかった。胸部血流の影響は泣き声自体の認知と超音波成分の両方が重要であることが示唆された。 2)吸啜刺激だけでなく乳児の泣き声も血中オキシトシンの上昇を引き起こす(McNeilly et al., 1983)。そこで、血中オキシトシンが超音波成分を含む泣き声によって上昇するか否かを調べた。泣き声の呈示前後で採取した血液よりオキシトシン量を調べたが、特定の音響成分によってオキシトシンが有意に上昇する結果は得られなかった。 3)fMRI研究において、泣き声に対する脳賦活領域の一つは前頭前野腹内側部であることが示唆されている(Kim et al, 2011)。そこで、多チャンネルNIRSを用いて、泣き声に含まれる超音波成分に対して特異的に賦活する前頭葉領域を探索した。しかしながら、NIRSを用いた計測では前頭葉の血流の有意な上昇は見られなかった。 母子のきずなの形成にはコミュニケーションが重要である。本研究により、乳児から母親への情報伝達手段の一つである泣き声が意識上のみならず意識下にも伝達され、母親に生理学的影響を及ぼす可能性が示唆された。一方で、胸部血流上昇の直接的要因となるオキシトシンや脳機能との関係性に関しては、尿中オキシトシンやfMRIによる検証が今後の課題である。
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