2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳死下あるいは心停止後臓器提供を行なったドナー家族の体験
Project/Area Number |
21792278
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高田 幸江 慶應義塾大学, 看護医療学部, 助教 (80529371)
|
Keywords | ドナー家族 / 臓器提供の体験 / 脳死 / 心停止後 |
Research Abstract |
わが国では移植医療は、脳死下あるいは心停止後のドナーからの臓器提供は少なく、生体ドナーからの臓器提供に大きく依存している。しかし、臓器提供後のドナー家族に関する研究を概観すると、ドナー家族は、大切な家族の突然の死という耐え難い状況にありながら、臓器提供の決断を行わなければならず、その体験は複雑であることが推測されたが、ドナー家族の臓器提供の体験全体を明らかにしたものは無かった。これらの背景から、脳死下あるいは心停止後に臓器提供を行なったドナー家族の体験を明らかにすることを目的とした。 脳死下あるいは心停止後に臓器提供を行なったドナー家族16名を対象に、半構成面接を実施し、グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析を行なった。結果、コアカテゴリー『その人らしい生き方を支え、自分も支え続けられる』を見いだした。ドナー家族は、突然の家族瀕死の宣告を受け、奇跡を願うが、好転しない病状から徐々に家族の置かれている状況を理解し始める。医師より臓器提供の意思確認を受けるか、ドナーカードの存在を知ることによって、重篤な状態の家族への看病を行ないながら、生前の意思を思い図り、自分と家族への問いかけを行なう。ドナー家族は、家族の遺志を叶える、誰かの中で生きることへの願望、困っている誰かの助けになるならなどの理由により、限られた時間の中で重大な決断をしていた。提供後は、医療者の対応や、別れの時間の過ごし方、レシピエントの情報、周囲の反応によって、臓器提供への思いが影響を受けていた。改正臓器移植法施行により、生前の意思表示が不明の場合や小児であっても家族の同意で臓器提供が可能となった。今後はドナー家族の置かれる背景が多様化することが推測され、ケアを必要とするドナー家族への支援体制の構築が必要であると考えられた。 研究成果を広く公開するための論文投稿に備え、抄録の英訳を行なった。
|