2009 Fiscal Year Annual Research Report
精神科看護師が患者から受ける暴力の報告基準に関する研究
Project/Area Number |
21792318
|
Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
田辺 有理子 Iwate Prefectural University, 看護学部, 助教 (20448616)
|
Keywords | 看護学 / 暴力 |
Research Abstract |
医療施設において看護師の安全対策は重要な課題であるが、患者から看護師への暴力が発生した際の報告および情報収集のシステムが確立されていない。本研究の目的は、医療現場の中でも特に精神科領域において、看護師の暴力に対する認識と報告の判断に影響を及ぼす因子を抽出し、認識を一定にするための報告基準を明確化することである。初年度である平成21年度は、精神科に勤務する看護師12名に、臨床場面で自身や同僚が遭遇した患者からの暴力の経験、暴力と判断する基準、報告の基準などについてインタビュー調査を実施した。事前調査から言葉の暴力で6割、セクシャルハラスメントで5割、身体的暴力で4割もの未報告の事例があることが明らかになった。その背景には、個々の看護師によって、患者の行為を暴力と認識するか否かの基準に差異があった。認識に影響する要因として、《疾患》、《頻度》、《患者との関係性》、《背景要因のアセスメント》、《看護師の経験年数》、《職場風土》、《スタッフ間の相違》、《暴力のイメージ》が挙げられた。その要因は双方向性があり、同じ行為でも暴力と捉える場合と、精神症状の悪化と捉える場合とがあり、繰り返されることで暴力と認識する場合もあれば、日常的になると暴力と感じなくなる場合があった。これらの要因は一つだけで暴力か否かを判断するのではなく、複数の要因が作用して看護師の認識に影響していた。さらに、報告の種類もインシデントレポートなど書面によるものから、上司・勤務リーダーへの報告、申し送り、看護記録など方法や報告の目的が多岐に渡っており、必ずしも報告内容が安全対策に有効活用されていない可能性が示唆された。そこで次年度は、この結果をもとに質問紙調査を実施し、暴力の認識に影響する要因、報告の方法とその基準、報告の促進要因と阻害要因について検討していく予定である。
|