2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの多関節システムにおける運動制御と力制御の独立性の解明
Project/Area Number |
21800015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平島 雅也 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 助教 (20541949)
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Keywords | 運動制御 / 力制御 / 多関節システム / リーチング動作 / 冗長性 / 脳 |
Research Abstract |
私たちは日常生活の中で、物体との接触と非接触を繰り返し行っている。脳内の運動制御過程と力制御過程を理解することは、状況の変化に対するヒトの柔軟な対応能力の仕組みを明らかにすることにつながるものである。ヒトの多関節システムにおける運動制御と力制御のメカニズムを解明するために、平成21年度においては、まず運動の方向が脳内でどのようにコードされているのかを検討した。 ヒトの身体運動は、様々な冗長性を含んでいるため、結果的に生じる運動が同じでも、それを生み出す脳内過程が異なる可能性は十分にある。そこで本研究は、視覚運動変換を用いてこの状況を作り出し、同じ運動に対して異なる脳内過程が存在しうることを心理物理実験を用いて示した。リーチング課題で2種類のターゲットを交互に提示し、右斜め30度のターゲットの場合には、右30度の視覚運動変換を与え、左斜め30度のターゲットの場合は、左30度の変換を与えた。この課題を達成するには、左右どちらのターゲットに対しても、手をまっすぐ前に動かさねばならない。被験者は、結果的に生じる運動が殆ど同じであることに全く気づかない状態で、この視覚運動変換を学習した。さらに、この視覚運動変換がある状態で、それぞれのターゲットに相反する力場を課したところ、被験者は同時に適応することができた。これは同じ運動に対して異なる神経集団が動員されていることを強く示唆している。脳内情報処理の冗長性を行動レベルで示したのは、本研究が初めてである。
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