2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの多関節システムにおける運動制御と力制御の独立性の解明
Project/Area Number |
21800015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平島 雅也 東京大学, 大学院・教育学研究科, 助教 (20541949)
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Keywords | 運動制御 / 力制御 / 脳 / 一次運動野 / 座標変換 / ニューロン |
Research Abstract |
私たちは日常生活の中で何気なく目的の運動を遂行しているが、その動きを実現するために脳は実に複雑な計算を行っている。運動遂行には、おおきくわけて二段階の情報処理が必要である。1)視覚座標系で運動を計画する段階と、2)その運動を実現するために必要な筋力を計算する段階である。運動と力が脳のどの領域で処理されているのか?という問いには長い論争の歴史がある。その中で最も多くの注目を浴びた研究の一つとして、「一次運動野は、運動と筋力の両方を処理している」と主張したKakeiら(1999)の研究が挙げられる。しかしながら、この先行研究では、単一ニューロン細胞の発火頻度と運動(または力)パラメータとの相関だけをもって議論しているため、本当に両方のパラメータを処理しているかどうかは不明である。 本研究では、一次運動野が筋力のみを表現しているという筋力コード仮定を用い、Kakeiらの実験結果を再現する座標変換ニューラルネットワークモデルを構築した。本モデルでは、視覚座標系における目標運動方向が、手首の姿勢によってゲイン変調された信号が、一次運動野ニューロンに入力され、筋力が発揮されると仮定した。ニューロンは筋にのみ接続し、接続構造上はすべて等質なニューロンである。このモデルに手首の回内位、中間位、回外位の3姿勢において、8方向への運動課題を学習させた。その結果、ニューロンは筋を活動させているだけにも関わらず、筋力と相関を持つニューロンだけではなく、視覚座標系における運動方向と相関を持つニューロンも、見かけ上出現しうることが明らかとなった。本研究の結果は、見かけ上の相関だけをもって、ニューロンの情報コードを理解することはできないということを如実に示している。
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