Research Abstract |
本研究は,多数目的最適化問題(MaOP)に有効な進化型アルゴリズム(MOEA)を開発することを目的としている.研究計画に示した解の支配制御パラメータSの適応的決定法に関して,世代的にSを変更する方法を検討した結果,雑誌論文1件の成果が得られた.その後,解集団中の個体ごと適応的に解の支配領域を決定する方法を考案し,論文を国際会議に投稿中である.この方法では,従来の解の支配領域制御法のパラメータSの設定を不要にし,さらに研究計画に示した別の課題である,パレート最適解集合(POS)の多様性も改善する実用的なアルゴリズムを実現出来た. MaOPにおけるMOEAの解探索性能のさらなる向上が急務であることから,研究計画にあげたPOSの視覚化法の検討より優先して新しいMOEAの開発に取り組んだ.その結果,パレート部分支配を用いるMOEA(PPD-MOEA)を提案し,国際会議論文1件と雑誌論文1件の成果が得られた.従来のMOEAは,m個全ての目的関数を同時に考慮して解の支配関係を算出するが,PPD-MOEAは,m個の目的関数の中から取り出したr個の目的関数に対してパレート支配を部分的に適用した親選択を行う.さらに,r個の目的関数を何世代かごとに時間的に変更することによって,最終的に全目的関数を最適化するアルゴリズムを実現した.4~10目的のテスト問題を用いたシミュレーション実験の結果,従来法であるIBEA,CDAS,MSOPSと比較して,PPD-MOEAによって獲得されたPOSは,最適なパレートフロントへの収束性と多様性の両面でバランスの良い解探索を実現できることが確かめられた.従来のMOEAでは十分な解探索性能が得られない4目的以上の同時最適化において,PPD-MOEAは高い解探索能力を示し,MOEAによる多目的最適化の適用範囲の拡大に貢献できたと考えられる.
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