2010 Fiscal Year Annual Research Report
運動部活動の存立構造に関する研究:ボランティアとしての教師の積極性に注目して
Project/Area Number |
21800022
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中澤 篤史 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 講師 (70547520)
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Keywords | 運動部活動 / 顧問教師 / ボランティア / 歴史 / フィールドワーク / 意味づけ |
Research Abstract |
本研究の目的は、なぜ教師が運動部活動へ積極的にかかわるのかを、質的・歴史的アプローチから明らかにすることである。 平成22年度は、21年度から取り組んできた歴史的アプローチからの研究に、継続的に取り組んだ。すなわち、運動部活動への教師のかかわり方の戦後の変遷を、実態・政策・言説の3つの観点から考察した。結論として、教師が積極的に運動部活動にかかわってきた歴史的背景として、第一に、1945年から1950年代において戦後教育改革の文脈で、民主主義の象徴としてスポーツが高く価値づけられたこと、第二に、1960年代後半の東京オリンピック後の文脈で、一部の選手だけでなく全生徒へ平等にスポーツ機会を与えようとしたこと、第三に、1970年代後半から1980年代における生徒の非行問題の文脈で、その防止のためにスポーツが活用されようとしたことを指摘した。 加えて、質的アプローチからの研究として、中学校運動部活動のフィールドワークで得られたデータをもとに、現在の顧問教師が運動部活動へ、いかに取り組んでいるかを考察した。具体的には、運動部活動に積極的な教師が、(1)多様性への対処、(2)活動機会の配分、(3)他の校務との兼ね合い、という指導上の困難にどう向き合っているかに注目した。結果の一例をあげると、(1)の困難の場合、観察した運動部活動では、多様な生徒がいることで競技力の高い生徒が低い生徒をイジメる事態が生じた。これは、一見すると、典型的な指導上の困難に見える。しかし、運動部活動に積極的な教師は、こうしたイジメの事態を、ネガティブな教育問題ではなく、「生活指導をするチャンス」としてポジティブな教育機会としてとらえ返していた。結論として、運動部活動に積極的な教師は、指導上の困難を教育的に意味づけ直して主観的に乗り越えていること、それゆえに積極的なかかわりを持続させることを指摘した。
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Research Products
(4 results)