Research Abstract |
人間の触知覚は,ウェーバー・フェヒナーの法則に基づき非線形に変化することが知られており,皮膚表面に印加された刺激は,弱い刺激は感度良く,強い刺激でも発散せずに広帯城に知覚される.この触知覚の非線形性は,ヒト固有の巧みな触覚センシング能力の要因とも考えられ,その解明は生理学的な観点から興味深いばかりでなく,触覚提示デバイスなどの開発に際しても重要な基礎データを提供できる可能性を持つ.本年度は,モデルを構築し,これに基づく情報伝達特性を明らかにすることを目的とした. 本年度は,触覚受容器の一つであるマイスナー小体へ若目した.マイスナー小体は,皮下の真皮乳頭へ位置する機械受容器であり,螺旋状の神経軸索,層状に積み重なった層板細胞,およびコラゲン繊維から構成される.本研究では,これを非線形ばねと仮定してモデルを導出した.また,より現実的なモデル構築にも着手した.具体的には,複数の小体が繊維により結合されたモデルを導出し,機械系のパラレルメカニズムの概念を規範に伝達関数の構造を考察した.考察結果は,指先による柔軟体の知覚に関する心理物理実験などの結果と比較検討をおこなった.ここでは,指の力学モデルによる解析と心理物理実験をおこない,データ分析をおこなった.その結果,指先による弾性体の知覚においては,指先皮下の触覚受容器の応答に加えて,指先の姿勢或いは発揮力のオーダと弾性体の弾性率との関係,さらには指先の制御課題の難易度がその識別精度へ大きく影響する可能性を見出した.他方,得られた知見は,力触覚提示デバイスの構築へも展開されつつある.実際,球面超音波モータを利用した力触覚提示デバイスの開発に際し,本研究成果の一部が参考結果として吟味された.実際に近いパラメータ値を用いた場合に関する検討,及び人間の制御系との統合による能動センシングメカニズムの考察などが課題として残っている.
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