2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規骨接着型生体吸収性セメントの薬剤(抗生剤,抗癌剤)徐放能に関する研究
Project/Area Number |
21800034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
杉本 佳久 岡山大学, 病院, 医員 (80423309)
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Keywords | 整形外科学 / 骨 / 骨セメント / 人工骨 / 生体吸収性 / ドラッグデリバリー / 抗生剤 / リン酸化多糖 |
Research Abstract |
申請者らは独自に開発した硬組織接着性多糖誘導体を用い,生体親和性が高く,かつ骨に対し強固に接着する生体吸収性骨セメントを創製した。本研究では新規骨セメントのドラッグデリバリー機能,すなわち,本材からの薬物徐放能について検討した。新規骨セメントは生体吸収性であるため,従来のポリメチルメタクリレート(PMMA)骨セメントよりも良好な薬剤徐放能が期待できる材料である。 MRSA骨髄炎に対し効果のあるバンコマイシン(VCM)を新規骨セメント40gあたり1gの割合で混和し,ビーズ上に成型した。同量のVCMを混和したPMMAセメントビーズを作製し,比較対照とした。それぞれPBSバッファーに浸漬させ,薬剤を溶出させた。37℃で24時間毎にバッファーを交換した。溶出したVCM濃度を測定することにより徐放量を求めた。 VCM含有PMMA骨セメントから徐放されたVCM濃度は,1,2,3日目でそれぞれ72.4,29.4,9.9μg/mlであった。すなわちPMMA骨セメントから徐放されるVCMの濃度は徐放開始直後が最も高濃度で,以後は経時的に減少していった。一方,本新規骨セメントから徐放されたVCMの濃度は1,2,3日目でそれぞれ2757.8,1378.0,668.2μg/mlであり,PMMA骨セメントと比較して有意に高濃度であった(P<0.01)。 混和したVCMの量はPMMA骨セメント,新規骨セメントで同じであったにも関わらず,新規骨セメントからは非常に多くのVCMが徐放されていた。PMMA骨セメントはセメント表面に付着した薬物の徐放が主で,内部からは極少量しか徐放しないとされている。一方,新規骨セメントは生体吸収性であり,PBS溶液の中でも徐々に溶解していくため,多くのVCMが徐放されたものと考えられる。以上から,本新規骨セメントはVCMの徐放担体として非常に優れた性質をもつことが示された。
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