2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規骨接着型生体吸収性セメントの薬剤(抗生剤,抗癌剤)徐放能に関する研究
Project/Area Number |
21800034
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
杉本 佳久 岡山大学, 病院, 助教 (80423309)
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Keywords | 整形外科学 / 骨 / 骨セメント / 人工骨 / 生体吸収性 / ドラッグデリバリー / 抗癌剤 / リン酸化多糖 |
Research Abstract |
申請者らは独自に開発した硬組織接着性多糖誘導体リン酸化プルラン(PP)を用い,生体親和注が高く,かつ骨に対し強固に接着する生体吸収性骨セメントを創製した。本研究ではPPのドラッグデリバリー機能,すなわち,本材からの薬物徐放能について検討した。PPは生体吸収性であるため,従来のポリメチルメタクリレート(PMMA)骨セメントよりも良好な薬剤徐放能が期待できる材料である。 主要な抗癌剤の一つであるメソトレキセート(MTX)をPP40gあたり2gの割合で混和し,ビーズ上に成型した。同量のMTXを混和したPMMAセメントビーズを作製し,比較対照とした。それぞれPBSバッファーに浸漬させ,薬剤溶出試験を行うた。PMMAセメントから徐放されたMTX濃度は,1日目にピーク(1183±89μmol/1)となり、以後は漸減していった。PPからは1日目(86±8μmol/1)から4日目(73±16μmol/1)までは低濃度であったが、5日目(134±36μmol/1)から増加し、8日目(1131±66μmol/1)にピークを迎え、11日目に完全に溶解した。PPは多数のリン酸基を有するため、MTXの持つ電荷、および分子の大きさの違いにより、このような結果になったと考えた。 次に、動物実験でヌードマウスにヒト骨肉腫細胞株を移植し,形成された腫瘍にMTXを含有させたPPを接触させ、in vivoでの抗腫瘍効果を検討した。PPのみを皮下で接触させたものを比較対象とした。PP2gあたりMTX10mgおよび20mgを混和した群では腫瘍が縮小し、コントロールと比較して有意に腫瘍増大抑制効果がみられた。 これらの結果からin vitroおよびin vivoにおいてPPの優れた薬物徐放性能が示された。
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